ブリザード

トンネルを抜けて見えてきたアイスポイントの中は氷の街のようだった。広大な領地に殆どの家が氷でできており端っこの方には角材や鉄板などが並んでいた。


 ブリザードについてしばらく探検する。彼は急に振り返った。


「なんかわかったか?調査できたか?」


「できないよ!なんも分からない!」


「そうやろな。なんも教えとらんからな」


ミルはだんだんと警戒心を強めているような気がした。しかし戦闘は起こらない。ブリザードは気さくに話しかけてくれている。アイスポイントの中といい、ブリザードといい混乱しそうだ。


「考えろ………俺たちの目的は………そしてここは…」


 俺はハッとした。ブリザードからしたら俺たちは客人ということだ。彼は街を案内しているだけだ。彼にとっては俺たちの目的の詳細など気づけない。ならばすることは一つ。俺はミルの手を掴んでその場に引き留めた。ついてこなくなった俺たちを不思議そうにブリザードは見つめる。


「ブリザード………アイスブレイクしないか」


「………いいで。初対面やもんな」


ブリザードは直近の氷でできた建物に入った。俺は彼に続く。不思議と氷の冷たさは感じない。氷の椅子が二つ並んでいた。ブリザードがその一つにギリギリ収まるように座る。


「なんやミルはいらんのかい」


「私は…もう少し街を見ても?」


「かまわんで」


俺はブリザードと2人きり、アイスブレイクを始めることになった。分からないことだらけ、ならば相手のことを知りたい。それは自然だ。


「………さっき言ってた頭を冷やす期間ってどういう意味?なんでツドラルさんたち………雪溶け隊を追い返したの?」


「………氷が張る前………この国は相当栄えとった。ワイら守護者と人は協力して多くの技術を作り、発展しとった」


「………守護者と人が………そうだよな。俺も敵意がなければ仲良くするか、その場でバイバイって感じだし、わかるよ………な?ブリザードドライ」


ブリザードドライは呼ぶと俺のポシェットからひょこっと顔を出す。ブリザードはそれを見て驚き、すぐに笑い出した。


「おもろいな君ら!さっきの子はツルハシ腕に合体させとるし君は守護者と友達やし!」


「そう?」


「………そんなふうに仲良くやっとった。たが技術の発展に資源が追いつかんくなった。ワイらと一部の技術者たちは叫んだんや、資源の使いすぎだと。しかしな?人々は便利なことにつかりすぎとった。仕組みのわからん便利なもんを、システムを享受してた。何かが…かけていった………」


ブリザードは悲しそうに、言葉を一つ一つ絞り出しているようだ。


「ワイらと有志の守護者は技術者たちとこの国由来の特殊な氷を使い……みんなに頭を冷やしてもらうことにした」


「つまり…資源のつかいすぎ………無計画に享受してたのを止めようとした氷を貼ったの?」


「そうや。特殊な氷や。ブリザードと呼ばれるワイらにしか作れん氷を広げた。もちろん人的被害はゼロにした。そして人の集まるところ以外は氷で覆った。そこでほかの有志の守護者は全土に散らばり、氷の中で暮らした。可能な限り自分の近くに缶詰、生活必需品を氷の中にねじ込んでからな」


「じゃあ………守護者に敵意があるものや友好的なものがいるのって………」


「自分で考え、協力して、ほかの人のことも考えられるようにと、ワイらが依頼した。その形が戦いだったり人との協調だったりは守護者個人個人の見解や」


ブリザードのいうことは全て的を得ている気がした。しかしど真ん中ではない。確かに氷鉱夫として俺たちは成長できた。人のために動き、互い協力し、知らないことを調べ、自分たちの力で生き抜いた。氷がなかったら俺も何も考えず、体験できないかもしれなかった。


「雪溶け隊はワイらの理想やった。協力、自分で考えること、どれも完璧に思えた。しかしそれは一部の彼らだけやと思った。時期尚早やと」


「わかったよ、ブリザード。君たちのことを教えてくれてありがとう。じゃあ、俺たちのことも話していいかな」


俺はブリザードドライをポシェットから出し、ツルハシを置いた。それだけでなく、部屋の中にポシェットから出した流氷のキューブ、そして手袋を脱いで、その場に置いた。

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