協力依頼
朝早く、ショッピングモールの外から氷を削る音が響いてくる。俺は寒さを覚悟してドアを開け、ショッピングモールから外へ出る。目ではいるのは洗練されたフォームで氷を削り、資源を取り出すひとりの男。
「ずいぶんと朝早いんですね」
「そうさ…」
俺は並んで作業を始めた。ジローさんは片手でツルハシを振るらしい。しかし腰にはもう一つツルハシを備えている。長髪を後ろでまとめるジローさんはツドラルさんと知り合いらしいがいきなりそのことを聞く気はなかった。
「先日からこのショッピングモールでお世話になってます、マインです」
「こちらこそ、ジローだ」
「防衛はジローさん担当なんですか?」
「まぁね……ココには恩がある………そのお返し」
俺は意を決してブリザードドライとの接敵、ココの様子のことを伝える。しかしそれを聞いてもジローさんはなんの反応も示さない。
「ジローさん………ココと一緒に…俺たちと一緒に防衛してくれませんか」
「そうだね。ブリザードドライは一人じゃ無理だ」
ジローさんは自信をなくしていると聞いていたがかなり好感触だ。しかし次の言葉に俺は驚いてツルハシを止めてしまう。
「でも僕一人でやるよ」
「ど、どうしてですか?」
自信をなくした氷鉱夫とは思えない強気な発言だ。ブリザードドライとタイマンするといっているのだ。ささささすさ
「僕はね………自信がない………こんなに大きなショッピング番組モールを14歳にしてまとめているココと並ぶ自信が」
俺はドキッとした。俺も以前は自分の力を過小に考え、積極的に協力したり、人を引っ張ったりすることを恐れていた。しかしミルが問題をを克服したように俺もそれを克服できた。俺にならジローさんを説得できるかもしれない。
「確かにココはすごいやつです………あの年でこんな場所を」
俺は振り返りショッピングモールを見つめた。やはり大きな倉庫のような形だ。一つの街と言ってもいいほどの広さ、そして人口。
「僕はココの邪魔をしたくない。だから早朝に作業し、防衛は一人でやる」
「でもココは自分でも守りたい、らしいですよ」
俺は視線をジローさんに戻す。ジローさんはツルハシを振るう手を止め俯いていた。
「僕に彼女と並ぶ資格があるかなぁ?」
「それはわかりません。でもジローさんは守護者からここを一人で守れるほど強い。作業も今みたところ桁外れだと思います」
前日より確実に氷の壁がこうたいしている。そしてコンクリートの地面の面積が増えていた。
「………」
「俺たちの手本になって協力してくれませんか」
俺は頭を下げた。ジローさんは少し考えているみたいだ。アイスポイントの攻略に失敗したことによる自身の喪失。それがどんな気持ちかはわからない。だからと歩み寄ることもできない、こうしてお願いをするしかない。できる限り寄り添って。
「………俺は以前周りがすごい氷鉱夫ばかりで自分を助けられる立場と思っていました。でも、もらった知識、技術の分他の人を引っ張って、協力することが大切だと学びました」
「………自分の強さと同時に弱さを認めたわけか………僕も自信がないからとか言ってられないな………」
俺はジローさんに視線を戻す。ジローさんは歯を食いしばり何かを決意しているようだった。
「ココが…数年前氷の上で倒れていた俺を助けて引き入れてくれた恩人が困っているなら………雪溶け隊氷鉱夫ジロー………協力させてもらう」
俺は思わず笑みが漏れる。ジローさんはそれをみて笑った。同じ雪溶け隊のツドラルさんとは違うが深みが感じられる。彼の経験と知識が再び動き出すのだ。
「ありがとうございます!!」
「うん………じゃあとりあえず今日の分の作業を進めようかな」
ジローさんはツルハシを腰から抜いた。先ほどまで持っていたのと合わせて2本、片手に一本ずつだ。ジローさんは深く息を吸い、体を伸ばした。ツルハシを構えるジローさんは止まっているのに一瞬の隙もないように感じられる 。
「久しく二本使う………」
ジローさんは2つツルハシを続けて正確に氷に打ち込んだ。驚いたことに氷に打ち付けられた傷は一つだけだ。つまり二本のツルハシを同じところに当てている。
氷片が足元にどんどん溜まっていく。ジローさんが前進するたび氷が避けるように削れていく。
「ふぅ……マイン君僕は戦力に入るかな?」
「はい!ココと俺とミルとでやれば作業も防衛もうまくいくと思います」
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