押された背中
俺とミルは氷の壁の上に立ったことはなかった。あたり一面白銀の世界。氷世界だ。スケートリンクよりものようなその光景に息を呑んだ。
「そんなにびっくりしてどうすんだマイン、ミル。これから多分色々あんぞ」
グレンさんはツルハシを担いで俺とミルの真後ろで立っていた。その隣にはクリヤ。最低限、氷の上の歩き方を伝授してくれた。
「定期的に氷割っとくんだよ?迷子になるからね?」
「まぁ….守護者見つけたらついてけばいい。アイスポイントに、向かうって言うしな」
2人の言葉を背に受けて俺のミル目的を再確認する。
「アイスポイントに向かい」
「氷の壁の効率的な除去、もしくはコントロールのヒントを得る」
「キューブがあったら」
「集める」
OK、2人でそう声を合わせる。
氷の上は吹雪をほとんど遮るものがない。マント を着ておくのがベストだ。ペアルックは少し恥ずかしいが、マントの下はいつもの作業着、動きやすく、戦闘が起こっても対応できる。
俺はカストルフさんからもらった靴を履いていた。見た目はゴツいが軽い。スパイクモード、ゴムモードが切り替えることができる。そして1番の機能は手元のスイッチで靴から水が出てくるのだ。足を水に濡らし、凍りつくのを使ってする壁歩き、それが容易に行うことができるのだ。
「いろんな人から背中押されちまったな!」
「そうですね、必ずアイスポイントに…」
2人で決意表明をしているとグレンさんが間に割って入る。最強の一角、そして俺を氷鉱夫にしてくれた人だ。
グレンさんは布を俺たち2人に手渡してくれた。やたら手触りがよく、ゴムのような感触の手袋だ。
「これは俺とツドラルからのプレゼントだ。まじで高性能だ、これは。手袋は氷をつかめるレベルだし、攻撃も通らない、家が二軒建つ値段だ」
ギョッとして思わず落としそうになる、しかしグレンさんとツドラルさんの応援は心強い。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「ああ…よし!期待してるぜ、マイン!ミル!」
グレンさんはにこりと笑い俺の背中を押した。クリヤもミルの背中を押す。
不思議な力で前に進ませてくれているかのような心地だ。俺とミルは一歩ずつ歩き出した。そして十歩目で振り返り手を振り叫んだ。思い切り笑顔で。
「「いって来ます」」
俺たちが再びアイスポイントの方角へ向き直ると後ろから言葉が聞こえてきた。「いいアイスブレイクを」と。
アイスブレイクとは初対面同士が話したりして仲良くなると言うニュアンスだった気がする。だが氷鉱夫にとっては不思議な言葉だ。仕事はアイスブレイクそのものだ。しかし本来の意味でも人と出会い、仲良くなり、協力する、まさにアイスブレイクだ。
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