それぞれ
帰ってくると約束しろ、ツドラルさんからそう言われて俺はジャス地区第3、ガール氷鉱夫団を巡った。お世話になった人はいろいろだし全員巡っていたら旅になんか出られない。
しかし俺はいつも支えてくれた、共闘した仲間がいる。彼らに差異をつけられないが俺の中で特にその中でも付き合いの長い氷鉱夫がいる。
コンプス地区第二採掘氷場に行く頃には夕暮れとなっていた。工場地帯であるコンプス地区はいつも会話ができないほどの工事ようからの音が聞こえるが、今は静かになっている。目的地に向かいながら俺は深呼吸した。
「ミルは…誰のところに言うてるんだろう…」
「クリヤさんと職場のカイさんのところじゃないかな?」
俺は真後ろを振り返った。緑の髪の毛、緑のツルハシの戦友がいつのまにか後ろにいた。コンプス地区第二の近くだからおかしくはないがかなり驚いた。
「びっくりしたでしょ?クリヤさんから斥候部隊の移動法とか習ってるんだ」
「ノルダ…伝えたいことがあってきたんだ…」
「…ツドラルさんから………なんとなく聞いてる」
ノルダはてでこちらに来てとサインする。誘導されるがままにコンプス地区第二採掘氷場に入った。あいも変わらず整頓されている。そして見慣れない特訓マシーンがはじにおかれていた。ノルダの進化の秘訣だろうか。
「ツドラルさんが控え室の鍵持ってるから外のベンチでいいかな?」
「うん…」
前の2人とは何か違う。すでに俺の言いたいことを知っているからだろうか。ノルダはベンチに座りながらツルハシを磨いている。
「ノルダ…聞いていると思うけど…」
「うん」
「俺とミルはアイスポイントに氷の壁のことを調べに行くつもりなんだ…」
「うん…」
「危険かもしれないけど…絶対帰る…だから………それを…約束する…」
語末が涙声になったのが自分でもわかった。俺は寂しいのだ。3人目で決壊しそうだ。一緒にいたい。素晴らしい仲間たちだ。でも人のために、氷鉱夫としてアイスポイントに調査に行きたいそれもまた俺の意思だ。
「マイン…僕は信じてるよ。絶対マインとミルさんが元気で帰ってくるって」
「…ノルダ…ありがとう」
「でも!」
ノルダはベンチからぴょんと飛び上がるように立ち上がった。突然のことに驚いていると飲んどはノルダのターンとばかりに語出す。
「ヒョウの国と国交が始まったからさ。氷鉱夫代表としての仕事が増えて…最速の氷鉱夫ツドラルさんがコンプス地区第二のリーダーを続けられなくなったんだ」
コンプス地区第二はツドラルさんとノルダ2人の採掘氷場だ。当然そうなると…
「僕が最速の達人の後継…コンプス地区第二のリーダーだ。もちろん1人だけじゃなく何人か新人を、雇うけどね」
「ノルダがリーダー…!」
「最年少リーダー…ツドラルさんの後継…新人からの羨望…多分以前の僕ならいっぱいいっぱいになってたかもしれない」
俺は黙って聞いていた。ノルダが折れてしまうとは思わない。ノルダは強い。心も体も。俺が黙っていたのはまだ続くとわかっていたからだ。
「でもさ!やたらめったら前を向いて努力するマインを見てきたんだ!人のために動き、協力し、俺はもっと凄くなるなんて確証のないことを言い放つ…そして本当に力をつける、そんな氷鉱夫をね。今度はアイスポイントを目指すなんて言い出した」
「うん」
「僕も無茶なことをやってみるよ………コンプス地区第二リーダーは最高の氷鉱夫になる………!」
ノルダは言い切った。普段優しく、サポートしてくれるノルダとは違った強さがかんじられる。1人の氷鉱夫として、プレッシャーがこれからあるのにもかかわらず最高になると言い切って見せた。
「ノルダならできる、信じてる!!俺も!アイスポイントにたどり着いて調査して!!絶対戻る!!」
俺たちはツルハシを高く掲げた。その状態でコツンと音を立てた2人のツルハシの振動は互いの意思を再び反芻させた。俺はノルダとは向き合った。互いに前途多難だ。でも前を向く。そう決めた。
「じゃあ…マインに一つ…目的に向かう最短はジグザグかもしれない…余裕を持って周りを見る…できることを組み合わせて…ターゲットにたどり着く。僕が今までの戦闘や作業で感じたことさ」
「ノルダ…いつもいつも…ほんとうにありがとう…また会おう…絶対帰る」
ノルダは精一杯の笑顔で迷いなく叫んだ。
「行ってこいマインっ!そして帰ってこい!マイン!」
以前ミルが倒れミルの職場に行く時の言葉だ。あの時とはシチュエーションも違うしミルも成長した。成長したうえで信頼の証としていってくれているのだろう。
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