外交

 パニック気味のヒョウの国の氷鉱夫たちを横目にツドラルは氷壁に沿って向こうを見つめた。マックスは肩で息をし、その場に座り込んでいた。


「何を見ている」


「そろそろだと思ってな」


直後ブリザードキューブが氷壁があった場所に向かって滑るように飛んできた。しかしそれは能動的なものではなかった。次に現れた氷鉱夫がそれを起こしたのだ。


「いっちょ上がり!!!!!」


舞い上がる土煙からブリザードキューブの姿が見えてくるとともにヒョウの国側のどよめきが大きくなった。キャタピラの通ったような跡の先端にブリザードキューブは気絶していた。


「………本当にこの国は………優秀がすぎるぞ」


グレンがツルハシを肩にかけてツドラルに歩み寄ってくる。呆れたように2人を見つめるマックスはほぼ負けを確信していた。


「助かったグレン。これで作戦は成功だ」


「流石に疲れたがな………まぁいい俺らの仕事の仕上げと行こうぜ」


ブリザードキューブ、マックスを倒した今ほぼ決着はついていた。しかしツドラルの目的はまだ果たされていない。


「ヒョウの国の氷鉱夫たちよ………外交を始めようか」


 ツドラルは外交官ではない。だからこれを見越して読んでおいたのだ。ヒョウの国の産業責任者たちを。


 守護者たちが気絶している戦線の向こうからツララ塔からの外交の一団が歩いてくる。彼らは崩れた氷壁越しにヒョウの国と向かい合った。


「最大の感謝を君たち氷鉱夫に」


 ツドラルとグレンに深く頭を下げた彼らは氷片をかき分けヒョウの国の方へと歩みを進めた。


「さて…氷鉱夫の役目はだいたいこんな感じだ。全戦線、被害を報告せよ」


ツドラルが無線機にそう呼びかけると次々に被害報告が聞こえてくる。しかしその中に人的被害はほぼなかった。全ての報告を聞き終えるととツドラルはその場に倒れ込んだ。


「ツドラル⁈」


「………平気だ。全ての戦線で戦闘は完了。防衛成功だ。内部も先ほどの報告で無事は確認している………」


「なるほどな….….さて….…俺も疲れたぜ!!」


 グレンもその場に腰を下ろした。マックスは先ほどまでの激戦が信じられない2人のリラックスぶりに驚いきまゆを釣り上げる。


「流氷のリーダーの目の前だということを忘れてないか?」


「どうせ戦いの最中だけだろ。流氷とヒョウの国の協力は。流氷のメリットは何かに縛られない移動性だろう。長期の協力は考えづらい」


「なるほど….…さすがだな」


「しかし氷鉱夫ツドラルとして君には興味があるぞマックス」


ツドラルは腰を起こしてマックスに向かい合う。氷壁のそばでの外交は関係ないかのように話し出した。


「興味?」


「俺に雇われないか?氷鉱夫として暮らせば良い。俺のコンプス地区第二はまだ人員の余裕があるぞ。君の身体能力を買った」


「ほう…….…魅力的だ。流氷と言っても個の集まり….…リーダーの俺が抜けてもまぁ問題はないが….…考えさせてもらう」


マックスはニヤリと笑った。外交の精通しているわけでもない3人はその場に座ったままだ。


 しかしこの瞬間殆どの氷鉱夫は各々の場所で疲れのあまり座り込んでいた。



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