ガール氷鉱夫団
突然バチバチという音が遠くから聞こえてきた。資源保管庫の方が心配だが目の前の相手から目を話すわけにはいかなかった。慌ててカゲトに視線を戻す。
「カゲトだっけか?なんでヒョウの国?は攻めてくるんだ」
テラスのそばで腰掛け、項垂れるカゲトはこちらを見た。焦っているような表情だ。
「…ヒョウの国と流氷としては…資源不足だ…だが俺はな…ガール氷鉱夫団のためだ!」
「ガール氷鉱夫団?そいつらのためってどういうことだ?」
「ヒョウの国は…二つの氷鉱夫団で構成されてる…俺がいるガールとボール氷鉱夫団だ…」
意外にもカゲトはスラスラと話し始めた。警戒をといたわけではないだろうが、自分に今できることが見つからないのだろう。
俺はそれに応えるべくツルハシを持ったまま同じように腰掛けた。
「それがどうしたんだ?」
「…ボール氷鉱夫団の奴らは流氷と手を組み…この国への侵攻を計画し始めた…俺たちガールは反対したが、勢力、氷鉱夫、ツルハシの保有数の差で折れた」
カゲトは言葉が切れるたびにため息をついたり、膝を自分で叩いたりしていた。
「じゃあカゲトは攻めてきたくは…」
「ない!だが、戦闘に参加しないとガールの奴らからツルハシを取られちまう!ツルハシは氷鉱夫の生命線だ…リーダーとして…ガールから俺は一人で戦闘に参加した」
「そうか……」
同情ではないが少し気分が落ち込んだ。確かに資源の不足は深刻だ。氷鉱夫として仕事ができなければガール氷鉱夫団は維持できない。
「カゲトの話はわかったよ…でも俺にもこの国の人たち、氷鉱夫に恩返しするためにツルハシをおさめられない」
「…わかってるよ……俺も負けたしな…ガール氷鉱夫団は解散だ」
どうやらカゲトは守護者とともにいないのでは単身ツララ塔に突撃するのは無理だとわかったようだ。言いたいことを言ったおかげでスッキリしたのでだろうか。
カゲトはゆらゆらと立ち上がり、重い足を氷壁の方へと向けた。
「おい…どこに」
「撤収だ…ソードアイスを回収してからな…」
複雑な気分だ。カゲトは完全に巻き込まれている気がしたのだ。しかし氷鉱夫マインとしてはい、そうですかとなるわけにはいかない。
しかしカゲトの背中を見て俺はあることを閃いた。
「おい!ちょっとまって!」
「….…なんだ?」
「俺はマインだ!ジャス地区第3採掘氷場所属!もし互いが仲良くなったらさ!ちょっと雇ってくれてもいいぜ!ガール氷鉱夫団を手伝う!」
ポーチからメモを引っ張り出しジャス地区第3の紹介状を俺はカゲトに押し付けた。
「俺はまだ防衛があるから!じゃあな!」
「…お人好し」
カゲトはこちらを向かずそう言って走り出した。それを確認するとミルと無線をつなぐため、胸元から無線機を取り出す。操作がよくわからないが適当にいじればいけるだろうか。
「もしもし…ミル?」
「間違えてんぞマイン!グレンだ!今何体倒した?」
「あれ?グレンさん?今一体だ、ミルと一緒にソードアイスってやつだ!」
「そうか!ノルダとクリヤはボルターを一体だから内地にいるのは残り二体!気張れよ!俺たちはもうすぐ壁を解除できる」
語りを覆う半透明の壁を見てみると先ほどより薄くなっているようだ。戦線を抜けて中に入ってきたクリスタをグレンさん、ツドラルさんが倒したのだろう。
通話を終えると俺はミルのいた位置へと駆け出した。もうカゲトはソードアイスとともに撤退した頃だ。
しばらく走ってミルの姿が見えると倒れていたソードアイスの代わりに違う守護者が見えた。
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