カストルフ、ジーンが接近する中テータはたまらず氷壁の向こうへと後退する。ツララザン、ツララガンたちも押されている。サポートアイテムももうない。捕まるのも時間の問題と思われた。


しかし直後カストルフの前方より一つの氷塊がとんでくる。それを受けてはいけないと判断したカストルフはジーンと共にバックする。するともといた場所で氷の弾がはじけた。


「これは…砲台?流氷にこれだけの戦力があったのか⁈」


カストルフジーン、氷鉱夫は氷の砲撃を見て攻撃を止めてしまう。するとその隙をついてテータとツララガン、ツララザンは撤退してしまう。


「今日のところは以上!おつかれ〜」


「ま、待て!」


「深追いしないよ、ジーン。氷壁の方はおそらく流氷のキャンプだ」


カストルフはツララ塔に繋がる通信機を胸から取り報告を始めた。


「こちらカストルフ、流氷は撤退した。しかし相手の戦力に移動砲台を一つ確認、他にも保有している可能性がある、各自警戒されたし、以上」


「こちらツララ塔、氷鉱夫カストルフへ。了解した。そちらの戦力を半数ジャス地区の方へ、ジャス地区は押され気味だ」


カストルフはそれを聞くと氷鉱夫の半数をジーン含めてジャス地区へと送る。おそらくかなり時間がかかる。マインたちが突破されるまでに間に合うかどうかわからなかった。


「ジーン、マインたちを頼んだ!」


「はい!」



****

「マイン!残りコオリドラゴン二体だ!」


ノルダの声に呼応する体力も残っていなかった。ジャス地区での戦闘は苛烈を極めている。ツララガンは倒したがそこでの消耗に加えて平均ステータスの高いコオリドラゴン複数を相手にするのは難しい。それにこちらの戦力は半数に減っている、


直後遠くから悲鳴が聞こえてきた。他の氷鉱夫の陣形が突破された。コオリドラゴンがそちらからもやってくる。目の前のコオリドラゴンと合わせて二体に俺、ノルダ、ミルが囲まれた。


「はぁ…はぁ…ノルダ、ミル…まだ行けるか?」


「当然…」


そう答えたミルの表情にも疲れが見える。3人の全身に擦過傷、打撲、もう体力も持ちそうにない。


話によると足りてないところには戦力が補充されるらしいが、それまで持ち堪えるのは難しい。だがここを突破されてはここに立っている意味がない。


俺は震える足を一歩ずつ、コオリドラゴンへと向かわせる。ノルダもミルも同じくコオリドラゴンへと向かう。勝ち誇ったような顔で流氷のポーン、余力を残したコオリドラゴン二体、せめて彼らの戦力を減らすのだ。


「スパートかけんぞ!!!」


激しい雄叫びを上げてツルハシを後ろへと振る、ノックバックさせた分のツルハシの威力は増す。コオリドラゴンに攻撃が当たるが当然の如く、鋼のような鱗に弾かれる。だが同じところに追撃したらどうだろうか。


ミルが俺が打ったところと同じ箇所をツルハシで打つ。ピシッという音ともに蜘蛛の巣のような跡が鱗に入った。コオリドラゴンもそれに反応し、尻尾でこちらを薙いでくる。それを力を振り絞ったジャンプでかわす、そうするとコオリドラゴンはバランスが取れなくなった。


硬い鱗に攻撃をするにはこちらも固く強い攻撃をする必要がある。俺はフォアリベラルの鉱技を発動してツルハシの硬度を上げる。鉱石のような硬さを手に入れたツルハシは先ほどの攻撃より響いた。コオリドラゴンは後ろに下がる。



「まともなダメージ入ったな…っあぶなっ!」


もう一体のコオリドラゴンが距離を詰めて俺のいたところを爪で攻撃する。たまらず後ろに下がると今度は青いブレスをこちらへ向けて打ってくる。


「やばいっ!」


「はぁぁあっっ!!」



ノルダの飛ばす斬撃がブレスとカチ当たった。その隙に俺は再び距離を積める。ミルが力を振り絞って突風を放った。横目でミルが膝をつくのが見えたこれだけの疲労の中打ったのだ。当然だ。


突風で浮いたコオリドラゴンにジャンプして俺は近づいたツルハシを振るう。先ほどの硬い攻撃を再び打ち込む。一体のコオリドラゴンはそこで膝をついた。




「あと一体だ!」


そう俺は叫んだ。気力はコオリドラゴンに向かっていた。しかし体力は闘志について来れなかった。目がかすみ、呼吸が難しい。ミルもノルダももう動けない。コオリドラゴン一体、戦線を突破される。


すれ違い様流氷のポーンが倒れ込む俺、ミル、ノルダを横目に言った。

「その若さで!ナイスファイトですな!」


それじゃダメだ。ナイスでもパーフェクトじゃなかった。でもまだやれることがあるはずだ。

俺たちは負けたかもしれないが、氷鉱夫はまだ負けない。

ツルハシの鉱技を発動する。できることはこれだ。

自身の胸当てをツルハシで力強く打った。使った能力は[轟音]。


胸当てとツルハシがあたる音はジャス地区全体に響き渡る。近くにいた俺は耳が痛い。


「今更何を?」


「ポーン…さん…コオリドラゴンも…これ以上は進ませない…」


「なるほど?味方を音で呼ぼうと…しかし我々はそちらの戦力を分断している。都合よくコオリドラゴンと戦える氷鉱夫が現れるかね」


直後轟音が響く。俺の使った音とは違う、しかし聞いたことがある。音の方から2人の氷鉱夫が現れ、コオリドラゴンに飛びかかる。


「点火ぁ!豪炎衝!!」


とてつもない熱波が吹き荒れる。コオリドラゴンを10メートルほどノックバックさせる。もう1人の人影が目にも止まらぬ速さで追撃を加えにいく。


「おしかえさせてもらうよ!!」


ジーン先輩のツルハシが鉱技を発動する。くっつく衝撃、相手を打ったらその衝撃は相手を押し続ける。思い切り打てばその力はずっとくっつく。


コオリドラゴンはポーンのはるか後ろの氷壁に叩きつけられる。


きてくれたようだ。俺の音に反応して頼りになる先輩が。


「やれやれ間に合ったのか?」


「おそらく…マインたちは無事です、グレンさん」

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