撤退

ジーン先輩とグレンさんがコオリドラゴンに追撃を加える。2人の攻撃は俺とは重さが違った。もちろんジーン先輩は19で俺の一個上だしグレンさんには及ばないが。2人ともとんでもない攻撃力だ。


「ジーン、マインにいいとこ見せてやれ!」


「そういうんじゃないでしょう!」


流氷のポーンは慌ててポケットから轟音のキューブを取り出し2人に投げつけようとする。しかしそれはグレンさんに察知された。


「出たな、流氷の謎アイテム!使わせん!」


グレンさんはツルハシの炎を息で飛ばす。なんとその距離25メートル、火炎放射はキューブを落とし、ポーンはさらに慌て始める。


「なんだとっ?!」


そこから2人の猛攻によりコオリドラゴンはついに膝を折ることとなった。流氷のポーンは思わぬ助っ人にたじろぐ。


「よもや、ツララガン、コオリドラゴンを倒されるとは…仕方ない…テータも負けたようですしこれにて…」


流氷のポーンは仲間を呼びコオリドラゴン、ツララガンを保護してなら氷壁の向こうへといつてしまう。それを見てグレンさんは胸の通信機を口に当てる。


「もしもし?」


通信機の向こうからツララ塔と思しき人が返事をする。通信機を持っている氷鉱夫は一斉につながっているらしく、次々に言葉が聞こえてくる。


「ジャス地区の流氷は撤退したぜ」


「この声はグレンか…名前を言ってからにするんだ…こちらツドラル…氷鉱夫カストルフと共にグレイシャス地区の安全を確認…以上」


「こちらマリーナ…コンプス地区の流氷も撤退」


グレンさんが連絡をとっていると、ジーン先輩が俺の方へやってきた。


「すみません、先輩」


「何、君たちがいてくれたからここを守り切れたんだ、おつかれ」


ジーン先輩はにこりと笑い俺に肩を貸してテントの方へと向かってくれた。先にテントにいたノルダとミルも怪我はあるものの平気なようだ。湿布やら包帯やら巻かれたノルダとミルと同じように俺も治療を受け、今日はこのテントに止まれと医療スタッフから言われた。



テントの中には戦闘を終え憔悴し切った顔の氷鉱夫がたくさんいた。ノルダもミルも疲れで隣のベッドで眠っている。

体をきれいにしてもふもふのベッドに入るとドッと疲れが襲ってきた。戦闘の反省もしなきゃならないし、街の被害も気になったが、眠気には勝てなかった。


 翌朝目覚めるともう昼過ぎのようだ。慌てて起き上がり、戦闘の後処理などを手伝おうとするが、医療スタッフが飛んできて押さえつけられた。


「まだ寝てなさい!…全く!君の両サイドのベッドに寝てる女の子も男の子もおんなじことしてるからね?なんなの君ら」


そう言って医療スタッフの人は食べ物を置いて出て行った。右を見ると緑色の寝癖がぴょんとはねたノルダがニコっとしてこちらを見ていた。左を見るとボサボサになった茶髪をベッドに広げて寝ているミルが目に入る。


「疲れたな…」


「そうだね、おはよ、マイン」


朝がきついと言っているノルダより遅く起きたということは今相当遅い、正午は過ぎているだろう。ミルを起こさないように小さな声でノルダと会話する。

「被害規模も最低限…よくやってくれた…だってさ」


「誰がだ?」


「ツララ塔の人、朝来たんだ」


ノルダは伸びをしてベッドから立ち上がる。頬やら腕やらのガーゼも新しい。寝ているときに変えてくれたらしい。


「僕は傷の治り結構早いんだ、外の空気吸ってくる、僕は許可もらったし」


ノルダはニコッとそういうと水の入ったコップを俺の方に渡してくれた。そういえば喉がカラカラだ。寝ている間に治療はできても、水分補給はできない。


水をいっぱい飲むと目が覚めてくる。そして戦闘の記憶も鮮明になってきた。自身のツルハシは流氷の、戦力に届かなかった。一人で勝つのが難しいなら協力すればいいことは知っている。だから協力した。しかし俺とミル、ノルダはこうして倒れ、助っ人に助けられた。


「もっと…個でも強くならなきゃ…」


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