マインvs No. 1

過剰な責任感、ミルの状況にピッタリ合うかもしれない。しかしそうは言ってもどうすればいいのかは未だわからない。むりすんなよと言ってもミルは聞き入れないだろう。


「どうしてスカウトされたことが過剰な責任感につながるんです?」


ミルの上司カイなら分かるかもしれない、そう思って聞いたが彼から出た言葉は意外なものだった。



「おそらく…俺はそれを教えることができるだろう。だがマイン君、キミに教えてミルのためになるのか?失礼かもしれないが…俺たちも彼女のソレをどうにかしようとはしてきた…頑張れとは言いつつ彼女の作業は少し減らしていたんだ」


確かにそうだ。カイさんというミルの上司、カフェリア地区第一というNo.一の採掘氷場の氷鉱夫でもミルの責任感を緩和することは難しいのにルーキーである俺に何ができるのか。


「そ、ソレは…わかりません…だからといって!なんもしないのは嫌です!俺は友達にムリして欲しくない!!」


「なるほど…友達…確かに届くかもしれない」



カイはそういうと徐に立ち上がり、ロッカー開けた。中には彼のと思われるシルバーのツルハシがかけてあった。ソレを担ぐと俺に屋外に出るように促した。



「なんです?」


「友達の言葉なら届くかも…俺も賛成だ…でも申し訳ないがただの友達じゃダメなんだ力のある…強い氷鉱夫の友達でないとな」



ミルはルーキーの中じゃトップだ。確かに他のルーキーからの言葉は届かないのかもしれない。つまり彼女と同じもしくは追随できるレベルでなくてはならない。


「マイン君…ツルハシで手合わせだ…刃先には特殊なコーティングを今から施し怪我はしないようにしよう…俺に一回攻撃当ててくれ…そんな強い氷鉱夫ならミルのことを任せられる…原因は俺たちにあるが…頼む。受けてくれ


カイさん俺の方をじっと見つめた。ソレは部下を愛する、本当に思っている目だ。


「わかりました!認めさせて見せます」



俺は水ノリのような液体にツルハシをつけ、乾くのを待った。刃先は触ってみても痛くなく、丸っこくコーティングされている。

カイさんも同じようにし、彼の後に続いて外に出た。5メートルほどお互いに離れて鶴橋を構える。

  


カイさんの構えはグレンさんのような大振りではなく、腰のあたりに構え、隙が全くない。その眼光は見たものを凍りつかせそうなほど冷たいが、その奥には暑い感情が感じられた。



俺もツルハシを構える、フォアリベラルの技は使ってもいいとは言われた。もちろん威力は抑える。だがそうするとそもそも威力の低いフォアリベラルの力がますます下がる。だから俺は持ち手を長く持ち、パワー重視の持ち方だ。



「行きます…」


「ああ」



対人戦ゆえにあまり鉱技は使えない。体術の勝負だ。俺は横なぎに鶴橋を振るった。横からの攻撃は正面にくらべで防ぎにくい。しかしカイさんは難なくツルハシをの刃で受け流してしまう。



こちらがなにを繰りだしても踊るように受け流され懐に潜り込むこともできない。


暗くなってゆく空間に二人のツルハシがかち合う音が響く。その音源は互角とは程遠い攻防が繰り広げられているとは誰が思うだろうか。



「くっ!間合いに入れねぇっ!」



だんだんと疲れがたまり、ツルハシに振られることが多くなっていった。かたやカイさんはほぼツルハシを持つ手がぶれず、姿勢もまっすぐ保ってる。



おそらく桁違いのバランス感覚と筋骨隆々とは似合わぬ体の柔らかさ、ソレが攻撃を受け流しながらも姿勢がぶれない要因だろう。


だが諦めるわけにはいかない。友達のためだ。ミルに言葉を伝えるためだ。考えろ!

ミルなら突風を放つだろう。ノルダなら飛ばす斬撃がある、俺も遠距離から攻撃して相手にガードさせ、その間隙にガードをしていないところを狙うしかない。



俺はツルハシをぶん投げだ。刃先もコーティングされてるし怪我はしない。だがカイさんもそれには驚いたようで少し表情が変わった。投げられたツルハシを防ぐも先ほどよりも姿勢がぶれる。まさか投げられるとは思ってなかったみたいだ。



投げた瞬間俺は風を切って突進していた。カイさんの懐に入り込む。渾身の、あらんかぎりの力を込めて俺は加速してカイさんの腹に体当たりした。


鋼のような腹筋が頭で感じられた。体幹も凄まじいのだろう。たが静止した人が体当たりを喰らってバランスを取れるはずがない。



「なっ?!」



俺は倒れたんでカイさんの上にまたがっていた。


「攻撃…ツルハシをオンリーとはいってませんよね…!」

おれは肩で息をしながら言った。虚をつかれた顔をした後カイさんは笑い出した。


「ふはははっ!やられたね…合格だ…ミルのことをを話すよ。そして彼女の助けになってくれ」



ツルハシのコーティングはぺりぺりと剥がれるようでソレを処理した後また控え室に戻り、椅子に座った。


「フォアリベラル…キミのツルハシ知ってるよ、想像力がカギのツルハシだ。持ち主はふさわしい男のようだ」


「恐れ入ります!」


カイはコーヒーをおれと自分の分を入れ、テーブルの上に置くと話始めた。


「ミルがなぜ責任感が強くなったのか…そうだね…彼女のが10歳から15になるまでつまり役5年前前後…氷鉱夫の数が少なかったんだ」



「数が…」



「当然一人当たりの負担が増える…だが当時十代前半の女の子に無理させたくなかった。スカウトした俺たちカフェリア地区第一のメンバーは頑張ったさ!彼女はそんな俺たちを見て育った。でもある時ミルは言ったんだ」



カイは遠くのものを見つめるように思い出しながら言った。


「わたしにも皆さんのお手伝いもっとさせてください!、ってね。健気な女の子に少し仕事を分けてみた。俺たちがムリしてるのをみてミルは私もやらなきゃ、と思ったんだ」



ガッテンがいった。確かに周りの大人が汗水流しているならもっと手伝いをしたいと思うだろう。おれでもそうだ。だがその大人というのがミルの場合ナンバーワンの人物たちだ。



もっと頑張らなきゃ、わたしがやらなきゃという思いが過剰になると考えるのは容易だ。



「そこで生まれた責任感が今も続いていると」


「そう…後ソレを加速させたのが腕に同化させ、エネルギーを与えるツルハシの入手だ」



「ミルのツルハシが関係あるんですか?!」


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