白のアサガオ

ならさき

白のアサガオ(戯曲台本)


【登場人物】

シロ・・・犬

ミミ・・・うさぎ

佐吉・・・20代後半の男性

マル・・・20代後半の男性

旅人・・・20~30代後半の男性



(シロとミミ、お花畑にいる)


シロ:ねえ、ミミちゃん?


ミミ:なに?シロくん


シロ:僕、ミミちゃんのこと好きだよ


ミミ:ふふっ、私嬉しいけど、それは無理よ


シロ:どうして?僕、ミミちゃんの言う事全部聞いたよ?ミミちゃんのヤなとこ全部直したよ?それでも僕は、ダメ?


ミミ:だってシロくん、私みたいにお花をたしなまないもの。いつも見てるのは、そこら辺をうろついてるミミズさんと…私だけ。


シロ:たしなむって?


ミミ:私みたいにお花を見て、楽しむってこと。


シロ:じゃあ、僕もそうすれば、ミミちゃんは僕のこと、好きになってくれる?


ミミ:考えてあげようかしら?


シロ:やった!じゃあ僕も、お花をたしなめばいいんだね?よーし、やるぞー!


ミミ:ふふっ、シロくん、いつもそればっかり。でも、私の言うことは聞いてくれるのね。


シロ:だって、ミミちゃんが好きだから!


ミミ:私も好きよ、シロくん。でもあなたは……



(翌日、再びお花畑)


シロ:ねえ、ミミちゃん?


ミミ:なに?シロくん


シロ:僕、ミミちゃんのこと好きだよ


ミミ:ふふっ、私嬉しいけど、それは無理よ


シロ:どうして?僕、ミミちゃんの言う事全部聞いたよ?ミミちゃんのヤなとこ全部直したよ?お花もたしなんだよ?それでも僕は、ダメ?


ミミ:だってシロくん、草を食べないもの。いつも私をおいしそうに見てる。


シロ:じゃあ僕もそうすれば、ミミちゃんは僕のこと、好きになってくれる?


ミミ:考えてあげようかしら?


シロ:やった!じゃあ僕も、草を食べればいいんだね?よーし、やるぞー!


ミミ:ふふっ、シロくん、いつもそればっかり。でも、私の言うことは聞いてくれるのね。


シロ:だって、ミミちゃんが好きだから!




(シロ、お花畑をうろつく)


シロ:けど、僕は何を食べればいいんだろう?ミミちゃんはいつもたんぽぽを食べてたな……。ん?これはなんだろう?



(佐吉、やってくる)


佐吉:ん?シロ?こんなとこで何やってんだ?シロ……?シロ!お前これ……ツツジじゃねえか!!なんでこんな毒草を……。待ってろ!すぐ薬を取って来るからな!




(佐吉、駆け出す。そこにミミがやってくる)


ミミ:シロくん?


シロ:ミミちゃん……ダメだ僕……草を食べられないよ……。


ミミ:ふふっ、シロくんは私の言うことは必ず聞いてくれるのね。


シロ:ミミちゃん、僕のこと、嫌いになった?


ミミ:わからないわ。


シロ:じゃあ……やっぱり僕のこと……


ミミ:けどね、シロくん。私はシロくんが傷つくのは、嫌よ。


シロ:じゃあ……僕がそうすれば、ミミちゃんは僕のこと……好きになってくれる?


ミミ:……考えてあげようかしら?


シロ:……やった!じゃあ僕は……傷つかないようになればいいんだね……?僕が傷つかなくなったその時は……僕はミミちゃんのこと……ずっと守るよ。


ミミ:……楽しみにしてる。



(佐吉とマルが合流し、佐吉はマルに状況を説明した)


佐吉:しかし、今まで肉やエサしか食べなかったシロが、なんでツツジなんか……。


マル:シロ、最近やけに、花に興味を示してきたな。


佐吉:兎にも角にも、シロがいなきゃ狩りが始まらん。コイツは俺の相棒だからな。


マル:手分けしてシロを介抱しよう。俺は薬草を取ってシロに飲ませる。佐吉は栄養のある動物を狩ってきてくれ。


佐吉:わかった。



(佐吉とマル、それぞれ出かける。シロの意識は朦朧としたまま)


シロ:ん……これは、薬草?


(シロ、薬草を食べる)


シロ:佐吉が置いていったのかな……?ミミちゃん、僕は傷つかないよ。約束は守るよ。だから……置いてかないでぇ……。




(マル、シロのもとに駆けつける)


マル:シロ!大丈夫か!?


シロ:マル……?どうしたの慌てて……


マル:心配はいらねえ!今、栄養のあるものを狩ってきてやる!お前の好きな肉だ!


シロ:肉……?やったあ……佐吉が狩ってきてくれる……!


マル:ああ、嬉しいか?なんでも美味いもの食わせてやる!シカでも!イノシシでも!ウサギでも!!


シロ:ウサギ……ウサギ!?大変だ!ミミちゃんが……ミミちゃん!!


マル:おい!シロ!!どこ行くんだよ!!戻ってこい!!


(シロ、駆けてゆく)




ミミ:あら、シロくん。どうしたの?フラフラじゃない。ちゃんと薬草は……


シロ:ミミちゃん!今すぐここから離れて!ここで花を積んでちゃ、ダメだよ!危ない!


ミミ:……どうして?なんでシロくんはそんなに焦っているの?


シロ:そんなのはいいんだ!!時間が無いよ!早くここから逃げて!!


ミミ:シロくん?様子がおかしいよ?何か毒に侵されたんじゃ……。今すぐ薬草を……



シロ:いいから早く出ていけ!!!!!!



ミミ:シロ……くん……


シロ:え……あ……違うんだ……早くここから逃げないと……


ミミ:っ……!!


(ミミ、駆け出す)


シロ:ミミちゃん!!




(シロ、マルの所へ戻る)


マル:おい、どこ行ってたんだ!探し回ったぞ!


シロ:ミミちゃん……僕はまだ……君のこと、好きになれるかな……


マル:しっかし!いつの間にかお前薬草なんか食ってたんだな。俺も佐吉も、どうにもならないかと思ってヒヤヒヤしたぜ。一体誰なんだろうな?薬草なんか渡したのは。


シロ:なんだって!?佐吉でもマルでもないの!?……まさか!


マル:ん?どうした?必死に地面嗅いで。なんだこれ?……うさぎの足跡?


シロ:薬草を持ってきてくれたのは……ミミちゃんだったんだ……。なんだ……僕のこと、嫌いじゃなかったのか……。それなのに僕は……僕は!



ダーン!!!(銃声)



シロ:!!


マル:おっ、仕留めたか!


シロ:ミミちゃん!!


(シロ、駆け出す)


マル:どうしたシロ!また急いで駆け出して……。あいつ、そんなに嬉しかったのか?




シロ:ミミちゃん……!ミミちゃん!ミミちゃんっ!!!


佐吉:よお!シロ!元気になったか?ほら、見ろこれ!いいうさぎが捕れたぜ!まあ待ってろ、すぐに捌いてやるからな!


シロ:佐吉……佐吉ィッー!!!!!


佐吉:いててっ!!なんで俺を噛むんだよ!離せっ!!あだっ!!おい!そのうさぎをどこに連れてくんだよ!!おい!


(シロ、ミミを咥えて走り出す)



シロ:ミミちゃん!ミミちゃん!!


ミミ:シロくん……。ふふっ、ごめんね。シロくんの言う通りだった……。


シロ:待ってて!今すぐ花畑へ連れてってあげるから!


ミミ:薬草を食べても、もう無理よ……。これはもう、治らないわ……。


シロ:いいから話さないで!!!僕、謝らなきゃいけないんだ……。君のこと、ずっと疑って……!好きでいてくれたのに、自分勝手に嫌いになって……!僕を助けた事も……なんで言ってくれなかったんだよ……!

僕はずっと!君からの返事を待っていたのに!!


好きだって言ってほしかったのに!!!




(佐吉とマル、影で見守る)


佐吉:そうだったのかシロ、あの兎のことが……


マル:薬草もあの兎の仕業だったか。これを機に、シロを自由にしてやらねえか?


佐吉:いや、もうシロの心はあの兎に持ってかれてたんだ……。捨てられてた時から知ってる。あいつは孤独が嫌いだったんだ。それなのに俺は……。


マル:またシロを孤独にしてしまった……ってか?そんなに自分を責めない方がいいぜ?お前はシロのためにあの兎を撃ったんだから。


佐吉:いいや、責めても責めきれねえ……。すまない……!シロ……!




(シロとミミ、お花畑にたどり着く)


シロ:着いた……着いたよ!君の好きなお花畑だよ!僕、ここできれいなな花を見つけたんだ!君にピッタリなお花を!


ミミ:私に……ピッタリの……?


シロ:そう!一度君に見せたいと思ってたんだ!ほら、これ!!アサガオって言うんだ!!


ミミ:!!!!


シロ:ほら、この紫色の花!ピンクや、青もある!笑っている君の顔に、ピッタリの花!


ミミ:……近くで見せてもらってもいいかしら……?


シロ:うん!もちろん!


ミミ:(まさかシロくんが持ってきたのがこの花だなんてね……。ふふっ、ホントに私のこと、何も分かってなかったのね。それでもずっと私を振り切らず、私に向かって駆けてきてくれた。)


シロ:ミミちゃん……?何をして……


ミミ:大好きよ、シロ……!


(ミミ、力尽きる)


シロ:ミミちゃん……?ミミちゃん!ねえ、返事してよ!ミミ!!!!!


佐吉:シロ、諦めろ。そいつは……アサガオは、兎にとっての毒だ。


シロ:……へ?じゃあ、僕は……ミミに毒を……


佐吉:もう助からない……。すまない……!!


シロ:そんな……やだよ……やだよ!!


うわああああああああああああああ!!!!!!!!◎




シロ:(ねえ、ミミ?)


ミミ:(なに?シロ)


シロ:(僕、ミミの事が好きだよ)


ミミ:(そんなこと、わかってるわよ)


シロ:(僕、ミミの言う事全部聞いたよ?ミミのヤなとこ全部直したよ?お花だってたしなんだし、草だって食べた。ミミの気持ちも解ったし、ミミの言葉だって届いたよ?それでも僕は、ダメ?)




ミミ:(ええ、好きよ。シロ。)




(エンディング)




(旅人、シロとマルのいるところにたどり着く)


旅人:おや?こんな所にワン公がいるでねえか。なんでえ、昼寝中か?しっかし、ピクリとも動かねえじゃねえか。


佐吉:ああ、そいつは寝てるよ。待ちぼうけてるんだ。


旅人:ええ?佐吉の旦那じゃねえか。なんでえ待ちぼうけてるって?兎でも飛んで出てくりゃいいのにな!ハハハッ!!


佐吉:そいつはいいな。だけど、その肝心の兎はもう、飛んで出てきちまったんだ。だからその前でこいつは寝てるってわけ。


旅人:わけわからんな?まあいいか!しかしまあ、綺麗なアサガオが咲いてるもんだね。


佐吉:おっ、よく気づいたな!こいつはこの日本中探し回っても珍しいアサガオでな!


旅人:と、言うと?


佐吉:赤色、青色、紫色。全ての色がそれぞれ美しい。だけどこのアサガオの名前は、


「白(シロ)のアサガオ」って言うんだ



~完~



※フリーの戯曲です。好きなように演じていただいて構いません。

1.◎の箇所で一旦場面の区切れ、△の場所からはシロの意識の中での話です。

2.()のセリフは心情です。

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白のアサガオ ならさき @Furameru

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