第1話 幻の石
西暦5000年、4月、
その日はとても朝日が綺麗で、暖かい春風が誕生を祝福するように吹き抜けていた。
「蒼井さん、元気な男の子ですよ。それにこんなに美しい石を持った子供は世界中を捜しても、1人しかいないでしょう。」
若い看護士が興奮気味に言った。
そして助産師も、
「私が見てきた子のなかで、こんなにも美しい石を持って生まれてきた子は初めてです。きっと大物になるでしょう。」と嬉しそうに言った。
「あなたは今日から
母親は優しく、嬉しそうに微笑みかけた。
「ささ、抱いてあげてください。」
看護士のその言葉に、
母親が透を抱き上げた、次の瞬間…
パリィィィン!!
石は、派手な音を立て、粉々に跡形もなく砕けてしまった。
そして春風に吹かれ、その石は空高くへと舞い上がっていった。
母親は真っ青になり、
「嗚呼嗚呼嗚呼ああ…。嘘…こんなにも石が脆いなんてことがあるの?!
この子は空っぽの…何もない人間になってしまったの?」
「蒼井さん、落ち着いてください!」
看護士がなだめるが、その看護士の表情にも焦りが感じられた。
それもそのはず。
普通は、石が床に落ちただけで割れることは、異例中の異例であり、本当に稀なことだからだ。
母親はそんな看護士の言葉が聞こえていないかのように
「違う。なってしまったんじゃない…私がそうしてしまったんだわ。」
わなわなと震え、叫んだ後、ショックで意識を失った。
「まずい!過度のストレスは出産後には危険すぎる!先生を呼んできて!」
助産師の声が院内に響いた。
その後、母親は一命を取り留めたが、心に大きな傷を抱えてしまった。
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