第2話 解放ってなぁに?
「いや……解放っちゃ……解放だろ」
いや、だからその解放がなんだって聞いてんだろうが、クマさんよう。
パワーを解放か……う~ん、イメージでいったら……。
「あれか。気合入れて叫んだら強くなれる感じですかね?」
「う、う~ん、まあ、ああ、そうかな……うん、そんなもんかな……うん」
なるほどなるほど。
よし、やってみよう。
腰を押して、気合を込めて……。
「はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……。
はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……。
だぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……」
めいいっぱい、叫んで、見開く。
「ハァ!!」
そして、思いっきり叫び飛ばした。
それに伴い、ほとばしる我が魂。すべてのパワーが大地を揺るがし、大気を揺らす。ありとあらゆるパワーとパワーがオーラとなりて、俺の身に宿る。
その溢れんばかりのエネルギーは、目の前のダーカスを始め、この闘技場にいる全ての人が驚愕する!!
「……あれ?」
予定でした。
予定は所詮予定。現実は、ものすごい静けさが闘技場を支配し、いてもたってもいられない沈黙が広がっていく。
パワーの代わりに、冷たい風が申し訳ない程度に落ち葉を揺らしつつ、足元をさした。
「あ……あの……」
「おい、てめえ……」
だんだん近づいてつくる愉快なクマさん。
そして、ガッツリ俺の頭が掴まれる。
「楽しいジョークをどうもありがとう。で? そろそろ、本気だしたらどうだ、ああん? いつまでもてめえの園芸なんざ見たくねえんだよ!」
「園芸した覚え、ないんすけどね!?」
そして、また沈黙。
「お前、本気でさっきのやったのか?」
「……はい」
「笑いを取るためじゃないのか?」
「……はい」
「芸やって、観客から金投げてもらおうって思ったわけじゃあ?」
「……ありません」
ついにダーカスは大きく、それはもう大きくため息をついたかと思えば、俺の頭を振り飛ばしてくれた。
少し離れた地面にて、俺は崩れ落ちる。
「とんだ茶番だったな。お前のさっきの構えを見た時から不思議に思っていたが、お前……戦闘経験がまるでないんだな。力の使い方をまるでわかっちゃいない。
サーベルゴブリンの群れをやったのは、まぐれだったのか? どちらにしても、期待はずれってもんだ」
そんなことを言いながら、ダーカスはゆっくりと腰を落とし始める。
「だが、一番悪いのは勝手に期待した俺だよな。いわば、てめえは俺に振り回されてしまった被害者ってわけだ。それは、謝っておくよ。
その謝罪分と行ってはなんだが、少しばかり俺の力を見せてやろう」
そう言った時だった。今度は予定なんかじゃない。本当に大気が揺れた。ダーカスから数メートル離れているのに、俺の髪が引っ張られるほどに。
そして、続いてくるのはダーカスから溢れ出る気配。第六感だとでもいうのだろうか、生物的な本能がしらずしらずのうちに体全体を震え上がらせてくる。
何より感じるのは、熱。熱い……ひたすらに熱い。
「あのゴブリンを倒せたのが本当にまぐれだったのかどうか……最後にもう一度だけ確かめてやる。安心しろ、加減はしてやるからよ」
ダーカスから殺気のような何かを感じ、咄嗟に構える。だが、その瞬間には俺の視界から奴の姿が消えていた。
代わりに背中から気配が。
「がっ!?」
気がついたときには弾かれていた。はじかれた勢いのまま、数十メートル俺の体は吹っ飛んでいく。
態勢を立て直すよりも先に視界に再びダーカスの姿が目に入る。
両手拳が振り下ろされ、地面に激突。さらに追撃が来ることはもう、察しがついていたので強引に横跳びしそれを回避。
だが、ダーカスがそこに攻撃することはなく、むしろ回避した先に立っていた。
「は、速っ!?」
「はぁ!!」
ダーカスの蹴りが入り、打ち上げられる。だが、打ち上げられたかと思えば、今度は地面に叩きつけられる。
一瞬の出来事で何が起こったのかまるで分からない。
「どうした!? そんな程度か!?」
仰臥している俺の体を強引に起こしつつ、ダーカスを捉えようとする。が、想定ではダーカスの居場所は数メートル先だったが、視界いっぱいにダーカスの足元が映り込む。
その光景に息を呑みつつ、咄嗟の判断で後ろに跳躍。だが、その直後、俺は一気に前に踏み込んだ。
右手にこもる熱を感じながら一発。
だが、はじかれカウンターを食らう。
「くそっ!」
さらに蹴りをかますが簡単にガードされ、逆にダーカスの肘打ちをくらう。さらに、思いパンチが繰り出される。
後ろに弾き飛ばされながらも、必死で足に踏ん張りを効かせ態勢を保たせる。そこに向かってくるダーカスを捉え、拳をつき出す。
が、拳が当たろうとする瞬間、視界からダーカスが消える。だが、再び背中に気配を感じた。
今度はさっきより素早く感じ取れたため、裏拳を放つ。だが、既にそこにはダーカスはおらず、空振り終わる。
代わりに前から俺の腹に攻撃が下っていた。
「な……なんでだよっ!?」
前から向かってきたと思えば、後ろに回り込んで、だが、次の瞬間には前から攻撃を仕掛けてくる。頭がおかしいんじゃないかと思うようなスピードと攻撃方法に、翻弄されっぱなしだった。
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