第22話 魔王のセーブ12

約束の深夜の時間、


そして指定した集合場所のシュヴァッハ領とオプファー領の境界線場所にいる。








本来ならオプファーサイドには兵が多くいる為にうちと違って国境を監視する兵がいるが、


今は捌けさせているようだ。





適当に今日は休みの日だとか言ったのだろう。


国境兵に休みなどあるものなのだろうか








山あいの位置にあるため隠れやすい岩場などはたくさんある。


隠れて様子を見ていると


オプファーが指示通り数匹の警護役しか付けずに現れた。





「おーい!!来てやったぞ!このオプファー様が!」








高い声を上げながら我が領地に入ってくる。


取引はこちらの土地で行うことを決めていたのだ。





警護役も全て陣地に入ってきたことを視認し


指示を出す。








「「≪陣よ、浮き出ろ・エプリーアクサペンダ≫ッ!!」」








魔戦部隊員が両サイドから呪文を唱えると巨大な術式が、


ゴブリン一行の足元に展開されて電撃が走った。








「「ぎ、ギャアアッッ!!」」





悲痛な金切り声が共鳴して響く。


魔王のオプファーも油断していたのもあって


短時間拘束するには十分な効果だったようだ。








俺がゆったりと浮遊魔法『フローマ』で腕を組みながら、

苦しむ一行の前に降り立った。








「ど、どういうつもりだ!ま、まさかお前取引は嘘か!?」





「ああ、そうだ。それにお前を消し去るつもりだ」








さすがに魔王だけあって魔力耐性は大したものだ。


もう術式の中を抜け出そうとしている。








「フ、ふん!この程度の術式でオイラをどうにか出来るとでも...!」





「いーや、ここからが本番だ」








精神集中と体内に渦巻く魔力を開放を行う。





「ヘッ!お、お前のような人間が使う魔法に俺を殺す程度の力はない!


 い、今に見てろ!ここを抜け出した時、お前の最期だ!!」








よし、完全に力は引き出せた。


全力でやってみるか








「い、今殺してやるぞ!」





今、まさに奴が術式外に一歩足を踏み出した時





「覚悟はいいか、≪打ち止めよ、無に帰せ・リトゥーンベイターム≫ッッ!!」








俺の全開の魔法が前方敵全員を捕らえた。


蒼色の波動が音波のように勢いよく広がり、

先に見える草原を揺らしたのも見えた。





掛かったゴブリン共は全員地に膝を突いた。








「ぐ、があッッ...!」





オプファーもその場にへたり込んだ。





「こ、こんなことが...!」








勇者と似たような反応につい鼻で笑ってしまう。


それにしても上手くいった、


しっかりと魔王にも効果はあったのだ。





効果が無ければ、控えの魔戦部隊を全員投入して戦う羽目になったところだ。


オプファーもそれなりに実力があって魔王を任されている、


正面きっての戦いはどうしても避けたかった。





心配とは裏腹に手筈どおりいって、

アトリックが例のブツを持って近くに降り立った。








「ではこちらを...」





そう、受け取ったのは集会に遅れる原因になったブツだ。


聖界で強さや能力の値を可視化したもの、


計測器メンターとやらだ。








「ほう...」





起動させてかざして見ると一匹一匹のデータがパッと液晶に出た。





「フッ、おいおいアトリック。魔王とその警護役ともあろう方々が


 魔力耐性のランクがF-じゃないか」








魔界にも大体の能力のランク付けはあるが当然Fの-など虫けらのようなものだ。








「ええ、人間の平均値も下回るものにございます」





アトリックも意地悪な顔で力無きゴブリン共を見下した。


オプファーが顔を上げるのも必死に、

形相だけは今までより凄みを増して睨んできた。








「お、お前いつからこんな力...!?」





その言葉に俺は不敵な笑みで答えてやった。











「貴様たちが散々罵った、母の還元魔法の極地だ」








オプファーが大きな目玉を飛び出すほど丸くして絶句した。

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