第66話 苦行合宿ラストナイト
「我、宣言す。火の
しんと静まる中、なんで最後ダジャレやねんとツッコミたくなる俺の詠唱が室内にこだまする。
「……これならできる」
「な、何だか不思議な詠唱文ですね」
カメラの画像が映されたPCを見ながら、カオルさんとモモカは真面目に批評を行っていた。
ライブカメラが持ち込まれ、
ちなみにルイさんは、お行儀悪くチータラを口にくわえブラブラさせながら静かに3缶目に突入している。
意外と真剣に取り組んでいるのがカオルさんだ。機材の持ち込みもカオルさんだったりする。
「詠唱文はどの位、
「ほとんどかぶりません。300やっても1つ2つですね」
「魔法毎でも?」
「魔法毎で違う詠唱文ですね」
「……むぅ」
「や、やっぱり大変ですね」
酒に口を付けないカオルさんとモモカに何か言いたげなルイさんの視線が漂い、こちらにやってきた。
「はい。さいとーさん。喉乾くっしょ?」
差し出される強い缶チューハイ。
500mlは温くなってしまうためグラスを差し出すとダバダバと注がれる。
「ルイ、飲み過ぎ」
「だってみんな飲まないんだもん」
「飲みにきた訳じゃない」
「えー。休みなんだからちょっとくらい良いじゃん。みんなで飲もうよー」
「ジュ、ジュース頂きます!」
「モモちゃん乾杯しよ。カンパーイ!」
先程からMP回復休憩の度に乾杯が始まるのだ。ルイさんに諫言するカオルさんが凄く常識人に見えてしまう。よくよく考えると女子会ではなく2対2の合コンと言えなくもない。いや、そんなことはどうでもいい。
不味いのは俺のアルコール摂取量だろう。
恥ずかしさは薄れるが、声を出すせいで飲み過ぎてしまう。
「残り50回なんですが、詠唱成功率はクリアしているはずなので練習しますか?」
「あ、やるやる!」
暇を持て余していたルイさんが立ち上がり手を挙げる。
「わ、私もやってみたいです!」
「私も」
「では、みなさんで回しましょう」
こうして、アルコールで鈍くなってきた頭で詠唱をすることを回避して、グダグダ詠唱飲み会に発展。和気藹々と詠唱を酒のツマミとして乾杯を続けた結果、詠唱短縮を取得するころには記憶も曖昧になってしまっていた。
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