第37話 お詫び行脚
「⋯⋯ここか」
狸小路1丁目の行列が出来るテイクアウトのパフェの店。その隣の階段を登ってゆく。
カオルさんとモモカに昨日の離脱を謝罪した結果、お詫びにと指定されたのがこのメイド喫茶だ。
3階の扉を開けると、ドアベルの軽やかな音色が鳴り響く。
「「おかえりなさいませ。ご主人様」」
店の中は中央が空いており、両サイドに壁に向かってカウンター。壁に掛けられたモニターにはアイドルのライブ映像が流れている。珍しい作りだ。
「おっ、おかえりなさいませ。さいとー様!」
「おかえり。ご主人」
胸元を強調するデザインのメイド服を、無駄に身を包んだ眼鏡ロリメイドと男の娘メイドに出迎えられる。何故そうなった。
「カオルさんにアルバイト先を紹介してもらいましたっ。しっ新人メイドのモモです! よろしくご指導お願いしますっ!」
先輩メイドは満足気に頷いている。ほとんど本名だけどいいのか?
「何飲む?」
間引きの時はおさげにしていた茶髪をツーサイドアップに結い上げた先輩メイド。後輩メイドはあざとさ満点ピッグテールだ。
そして、意外とアルコール類が豊富だ。日が出てるうちから飲める店リストにピックアップしておこう。
「とりあえずプレモルで」
給仕の仕方を
「おっお待たせしましたっ」
「ありがとう。2人も何か飲んで下さい」
「ご褒美ありがとうございますっ!」
「ありがとう。モモ、今日デビューだから助かる」
どうやらOJT要員として呼ばれた様だ。これでお詫びになるならオッケーだ。
「カオルさんはここでバイトしてたんですね」
「ここと、ススキノのコンカフェ」
「⋯⋯なるほど」
カオルさんは見た目は良いが、トークは得意な感じではない。ニューハーフなお店はトークが売りの店がほとんどで、あまり向かないのだろう。そういう意味ではモモカにもメイド喫茶は向いているのかも知れない。婚カフェ?
しかし男の娘が普通に受け入れられるのだなぁと考えていると新しい客がやって来た。
「「おかえりなさいませ。お嬢様方」」
やってきたのは、ゴスロリ姿の女性2人だ。
なるほど
「カオルちゃんのお友達ですか? なるでーす」
新しい客の対応に行ってしまった2人の代わりにやってきたメイドさんは制服の胸部デザインの良さを活かし切っている。やはりこうでなくては。
「はい。ゲーム仲間です」
「モモちゃんもやってるやつですよね? いいなー私もやろうかな」
メイド服で乱舞するメイド戦隊。創成川イースト界のプレイヤー誘致活動にはアリだ。ちょっとプロデュースしたい。
「意外と運動にもなっていいですよ」
嘘ではない。魔法使い以外なら。
「えー。走ったりするの無理かもですー」
「なら⋯⋯魔法使いをオススメしますよ」
「いえ、魔法使いはちょっと」
悪の勧誘をしてみたが即答で拒否された。やはり悪評が轟いているのか魔法使いは人気がなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます