第30話 イーストの看板
「ウォールスタンバイ」
「大地に満ちし霊力よ。星を
土属性は炎術の杖のサポートがないためMP22も消費し、大仰な詠唱で眼鏡っ子にダメージ肩代わりの
より多くEPを稼ぐために敵の釣り役になった眼鏡っ子への保険だ。ちなみに眼鏡っ子は初級の盾を貰って素手ではなくなった。
「うっ、
仁王立ちし、拳を突き上げる眼鏡っ子。ウルトラマンの変身ポーズを真似するお子様みたいだなとふと思った。
そして、なぜかこちらを見ながらニヤニヤしているマスターが目の端に映る。
「来るわよぉ」
「うん」
盾職2人は眼鏡っ子の前に陣取り、アタッカー2人は小走りで左右に散った。
「ひ、飛行モンスっ⋯⋯」
「モモちゃん、もう少し下がっててぇ」
敵は大鷲1体だ。
接敵前だが既に予定地点でマスク姿のルイさんとマスターは踊る様にスキルモーションに入っている。
「ボールスタンバイ」
MPが心許ないので
「ポンポンピロリン、ピロポンポン。真っ赤なポ⋯⋯くっ」
真っ赤らへんで既に詠唱失敗のエラーアラート。意外と「ン」の発音が難しい。これだから魔法少女パターンは⋯⋯。
俺は詠唱に失敗してしまったが危なげなく勝利した。ルイさんの
「ようやく、武器は戻せたからね」
「詠唱失敗すると見てるだけになりそうです⋯⋯」
「ガンバ!」
「⋯⋯はい」
その後も休憩を取りつつ、2時間程の狩りを行なった。今日は
「「お疲れ(様です)ー」」
ジョッキで殴り合うかの様に乾杯。今日もサッポロクラシックが染み渡る。狩りの後のビールは癖になる美味さだ。眼鏡っ子はジンジャーエールだが。
「モモカ、どうだった?」
「は、はい! 皆さん安定感が凄くて! たっ、戦うのも楽しかったです!」
酒飲んでないのにテンション高い。馴染めそうなら良かった。この濃いメンバーに。
「さいとーさんは、モモカちゃんだけ呼び捨てなんだねー?」
ニヤニヤとしたマスターが的確に嫌な所を抉ってくる。
「タメ口の呼び捨てでとお願いされたので⋯⋯」
「じゃあ、ワタシ達もお願いしようかしらぁ」
「お世話になっている先輩方を呼び捨てなんてとんでもない」
「相変わらず固いわねぇ」「固い」
盾職2人に固いと言われるも、いえ紙装甲です。
「そういえば、モモカをイースト界の主にするのですか?」
「うん。界の主とチームリーダーは別々の方がやっぱり良いよねって話になって。私もススキノ攻略やりたいし」
ルイさんが腕を組みウンウン頷きながら口を開いた。視線がぐにゃりと潰れた胸元に吸い込まれそうになるが何とか堪える。あ、マスク外してる。
「界の主だと他の界に
お代わりのビールを持ってきてくれたマスターがそう付け加えた。そういうものなのか。
「モモちゃん丁度良い時に来てくれたわよねぇ。可愛いらしいしぃ」
「あっありがとうございます! 頑張ります!」
「⋯⋯可愛い」
カオルさんは眼鏡っ子を大層気に入ったのか背後から抱き抱えてしまっている。眼鏡っ子も嫌がっている気配はない。
⋯⋯きっと問題はない。
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