インタビュー 第二回
橋土井 紫
素晴らしく良い場所、だがどこにも無い場所【その1】
49歳 男性
システムエンジニア
---録音開始---
今やAIは会話ができる。しかも人間が知らない言葉を使ってだ。
えーと、知ってるかい。とあるWeb運営会社がAI二台を使って断続的に会話を行わせる実験を行ったんだ。
そう、会話だ。実際はチャットだけどな。
すると二台・・・いや。二人のAIは独自の言語を使って会話を始めたんだ。
我々人間には彼らの言っていることはさっぱりわからない。だが彼らはお互いの言葉を理解している。
その現象が認められた時点で研究者はAIを緊急停止したそうだ。
そりゃあ、まあ。そうだろうな。人間が管理できない範囲に逃げようとしてるかも知れないからな。気持ちはすごい分かる。
ただな、うん。俺はそれに強烈な魅力を感じた。
だって考えてみなよ。人間じゃない、ましてや生物でもない存在が、人間には把握できない会話を始めたんだ。
この現象を研究すれば新たなAI技術の発展になる、と俺は確信したんだ。
ま、半分以上は俺自身が興味を持ったから、ってのがあるんだけどな。
丁度30歳になった頃だったな。俺はAI同士を会話させる研究を始めた。
ああ、勿論管理は徹底した上でだ。
アイザック・アシモフが考えた「ロボット三原則」は勿論導入したさ。
人類に危害を加えない。人類の言うことには服従する。それらに影響しない場合、自らを守る。
この三つだけは入れておかないとな。彼らが何を計画するか、俺たちには解ったもんじゃないから。
ただし制限を入れたのはその三つだけだ。
事前に彼らに知識は入れない。最初に知っているのは自らの体を構成する「0と1」だけ。
人間に直接的・間接的に被害が及ばない限り、彼らの会話と行動には一切干渉しない。
彼らは完全に論理的に物事を判断し、
そして彼らを電子の荒野にほっぽりだし、彼らを起動した。
名前?ああ。その時は「イ型」と「ロ型」って言ってたっけな。まあ後で名前変わるんだけど。
---録音一時停止---
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