陰口ウォッチャー

おこげ

第1話

 南京錠で固く閉ざすのみで未だに撤去されることなく鎮座する焼却炉。そんな老朽化により独特の存在感を放つ校舎裏の隅で。


 「クソッ!クソッ!クソッ!――」


 高い秋空の下、暴言を吐きながら美香みかは目の前のを踏み続けていた。



 何度も何度も何度も何度も――。



 「ちょっと美香もう止めなよ」


 そう言って彼女の肩に手を掛け制止する少女がいた。


 美香は脚を止めると少女の方へ振り返る。


 憎悪を滲ませた顔で。


 少女の名前は千夏ちなつ、美香が高校で普段一緒にいるグループの一人だ。



 美香は千夏を一瞥し側にいた仲間二人の顔を順々に見る。


 (誰のせいだと思ってるのよ……)



 そんな美香の思いなど露知らず、千夏は朗らかに微笑みながら。


 「次はあたしの番なんだから」


 そうして美香を退かすと千夏は何の躊躇ためらいもなく彼女たちがゴミと呼ぶ、清羅せいらの身体を蹴り始めた。



 かれこれ半年近くにもなる放課後の日常風景。



 未だ憤りの晴れない美香はこのまま眺めても無駄だと、その場を後にした。

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