僕の話
冬ノ千
第1話僕とあいつと女の子
「おーい、颯。女の子呼んでるぞ」
僕はあいつに声をかける。颯はいつも女の子と一緒にいる3人から4人の女の子たと同時にではないが、誰かしらと大体一緒にいる。
ウザイ・・・
まあ、本気でそう思っているなら仲良くしていないし、別にいいと思う、だが、はっきりしろとは思う。
「わかった、今行くー。」
返事を聞いて少し待っててもらうように言って近くの自分の席に戻る。少しして颯が女の子の元へやってくる。
「
話しているのが小さく聞こえてくる。呼び捨てできんのスゲーな。
「この後、生徒会室来てくれるかな?大事な話だから、一人で来てほしいの。いいかな?」
顔を赤くし俯きがちに尋ねる。…ああ、やっと告白するのか。ずっといい感じだったし、颯も断らないだろう。
「わかった、行くよ。」
「じゃあ先に行ってるから。」
小走りで彼女は去っていく。颯と飯を食べていたので僕の席の横へ戻ってくる。
「ああ、呼び出し嫌だなぁ…」
「え?」
「なんか怒られるんだろうなー、はあ…」
何言ってんだこいつ。なんでこんな奴がモテるのかほんとにわからん。あの顔を見てないのか。完全に乙女の顔してたぞ。
「どうしよ、適当に理由付けていかないにするか…」
これには流石に呆れた。
「お前それはダメだろ…さすがにそれは俺でもしないぞ?人との約束は守ったほうがいいって。」
本当にこいつの何処がいいのかわからなくなってくるな。確かに困ったときに誰にでも手を差し伸べられるというのはすごいし尊敬もできる、きっと彼女はそこにほれ込んでいるのだろう。
「颯、お前さっきの子のことどう思ってる?」
「え?すごいいい子だと思うけど?」
「そう思ってるならすぐにでも行ってやれって。別に多少怒られるとしても良いじゃねえかよ。素直に返事して来いよ。」
「そうだな。さすがに行かないのは失礼だな…よし、行ってくるわ!ありがとな!」
ササっと飯をかっ込んでお礼を言って走り去っていく。すぐに自分を顧みて、お礼を言えるのも颯の美点だろう。
ああ、これであいつも彼女持ちか。独り身は僕だけになっちまった…
内心そんなことを考えながら一人飯を食べる…
後日、二人が恋人つなぎで下校していくのが見えた。うまくいったんだな、よかった。
「颯君たちうまくいったんだね。」
女の子が独り言のように話しかけてくる。
「え、ああ、そうみたいだね」
「じゃあ一人か、私も一人だから一緒に帰らない?」
「え?ああ、別に僕は一人でも気にしないでいいよ、わざわざありがとね」
「そんなこと言わないでよ、颯君が呼び出されたの見てたけど、君の行動気になっちゃって、興味出てきちゃった。だから、一緒に帰らない?」
ああ、僕のことを見てくれている人もいるのか。
途端にうれしくなった。
「わかった、僕でよければありがたく帰らせてもらうよ。」
僕は颯の脇役じゃないんだ。
僕には僕の物語があるんだ。
カバンを持って歩き出す。自分の道を進むために。
僕の話 冬ノ千 @oyunomame
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