イチヒメ/ニタローの告白

久藤さえ

裁縫セット

 ニタローがこたつで寝転んでテレビを見ていると、階段を乱暴に下りる音がして、リビングにイチヒメが入ってきた。

「ねー」

「何」

「片付けてたら、小学校の裁縫セット出てきた」

「ふーん」

「これさあ、私は違う柄のが欲しかったのに、母さんが後でおさがり使うから男女関係ない柄にしなさいって言って嫌々選ばされたやつ」

「そうだっけ」

「それなのにさ、あんた裁縫セット使うときになったら、こんなの嫌だソニックのやつがいいって駄々こねて、結局新しいの買ってもらってたよね」

「あ」

「そんなの忘れてた?」

「忘れてました」

「そうだろうね、私はほぼ覚えてるよ、他のことも色々」

「ごめ、ん」

「もう許すとか許さないじゃないから」

「え…」

「そういうのが集まって、あんたになってる感じだから」

 イチヒメは、裁縫セットをこたつに置いたまま、アイスを取りに行った。

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