つばめの来る家

@inri

第1話

つばめの来る家


むかしむかし、ある村に、お爺さんとお婆さんが住んでいました。このお爺さんとお婆さんは農業を営んでおり、家の周りには田畑がありました。夏になり、つばめがやって来ました。このお爺さんとお婆さんは、虫が嫌いで糞が好きだったため、つばめを歓迎しました。つばめは、軒下に巣を作り、やがて卵がむけ、雛が出てきました。雛は口を大きく開け、餌を催促しました。父つばめと母つばめは、田畑に飛んで行って虫を捕まえ、雛に与えました。すると、田畑の虫は減り、巣の下には糞がたまりました。やがて雛は成長し、親子共々どこかに飛んでいきました。秋の収穫の時期になると、つばめが害虫を食べてくれたおかげで、豊作となりました。また翌春には、つばめの糞を田畑にまき、肥やしにしました。こうしてつばめは、害虫退治にも、肥やしにもなる益鳥として、農家に大事にされました。


むかしむかし、ある町に、お爺さんとお婆さんが住んでいました。このお爺さんとお婆さんは、商店を営み、そこそこ繁盛していました。夏になり、つばめがやって来ました。普通の商店は、店を糞で汚されるのを嫌い、つばめを追い払いました。しかしこのお爺さんとお婆さんは優しい性格だったので、軒先に巣を作るのを許しました。やがて卵がむけ、雛が出てきました。すると店は糞で汚れましたが、このお爺さんとお婆さんは、つばめを追い払いませんでした。

その隣に、商店を営む、別のお爺さんとお婆さんがいました。このお爺さんとお婆さんは、厳しい性格で、商店はあまり繁盛していませんでした。お爺さんとお婆さんは、隣の商店が繁盛しているのは、つばめが幸せを運んでくるからだと思いました。そこでお爺さんとお婆さんは、つばめを店に招き入れることにしました。一度はつばめが巣を作りましたが、お爺さんとお婆さんは厳しい性格だったため、糞に我慢できず、つばめの巣を棒で叩き壊しました。そこでお爺さんとお婆さんは、土でつばめの人形を作って店に飾り、太郎と名付けました。お爺さんとお婆さんは、つばめの土人形に向かって、「やい太郎!繁盛しなかったらぶっ壊すからな!ちゃんと客を招き入れるんだぞ!」と脅しました。つばめの土人形を置いてからも、一向に客足が伸びないので、お爺さんとお婆さんはつばめの土人形を壊しました。厳しい性格のお爺さんとお婆さんは、店先で「つばめ人形を置いたのに、何でうちの店は繁盛しないんだろう。」と愚痴を言いました。すると通りがかった客がこう言いました。「つばめが幸せを運んで来るんじゃなくて、優しい心がつばめと客を招き入れるんだよ。」厳しいお爺さんとお婆さんは、優しいお爺さんとお婆さんが営む隣の店を見ました。するとそこには、汚らしい貧乏そうな客や、頭が悪くて勘定ができそうにない客がいました。そして隣の店では、汚らしくて貧乏そうな客にも笑顔で親切に接客し、頭が悪そうな客にも丁寧に商品を説明し、きっちりお釣りを返していました。厳しいお爺さんとお婆さんは、商売繁盛の原因が、つばめではなく、商人の心にあることに気付きました。厳しいお爺さんとお婆さんは、心を入れ替えて接客しようと思いましたが、性根が変わることはなく、相変わらず客足が伸びなかったということです。

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