ワンタンマン
@inri
第1話
ワンタンマン
子供たちの間で、アニメ「ワンタンマン」が人気だ。
アニメ「ワンタンマン」は、ワンタンをモチーフにしたヒーロー「ワンタンマン」が主人公で、ばい菌をモチーフにした悪役「バイキング」をやっつける、勧善懲悪のマンネリ物語だ。
ワンタンマンの基本ストーリーはこうである。
ワンタンマンは、照る照る坊主のような形で色が白い。そして毎回、何らかの料理を作って周囲の仲間に食事を振舞う。そんな時に、全身が黒くて角があり、矢印のような尻尾をもつバイキングが来て「私にも食べ物を分けてください。私は貧乏で腹ぺこなんです。」と食事を乞う。しかし、バイキングはばい菌まみれの不潔な体だったので、皆から「汚ねえな。食中毒になるじゃねえか。ばい菌はあっちに行け。」などと罵倒される。それでもバイキングは退散しない。怒りに燃えるワンタンマンは、「もう許さないぞバイキング。腕を鍛えた腕鍛(わんたん)マン」と言って一旦ポーズを決め、「ワーン、パンチ!」と言ってバイキングをぶっ飛ばす。
学校給食の時間になり、農民の子「田畑耕作(たはたこうさく)」とごみ回収業者の子「五味霞(ごみかすみ)も給食当番として、食事の盛り付けを始めた。
すると、医者の子「白医潔(しらいきよし)」がこう言った。
「おい、汚ねえ奴が、食事を扱うんじゃねえ。ばい菌で食中毒になるじゃねえか。」
すると担任の家中数文(いえなかかずふみ)先生「どうしたんだ、白医君。」
白医「家中先生、不潔な田畑と五味が、給食当番をしてるんです。これじゃ給食が不衛生です。」
すると家中先生は田畑と五味に近づき、「うん、確かに肌も黒いし、ちょっと臭うな。手を見せなさい。」
二人が手を見せると、家中先生「何だ、爪先に汚れが詰まってるじゃないか。こんな汚い奴に給食は任せられん。お前らやめろ。」
田畑は「済みません、どうかお許しください。私の家は農家で、家では野良仕事を手伝っているんです。肌が黒いのは日焼けですし、爪先の汚れは中々取れないんです。」
五味「私も、親のごみ回収を手伝って、どうしても汚れてしまうんです。」
家中先生「言い訳するな!理由はどうあれ、汚ねえもんは汚ねえんだ。もしお前らに給食当番を任せて、クラスのみんなが食中毒になったらどうするんだ!お前ら責任とれるのか!」
同級生が誰ともなく言い始めた。「そうだ、汚ねえやつは、このクラスには要らねえんだよ。保健の先生が、清潔にしましょうって言ってただろ。だいたいこいつら貧乏で、給食費払ってねえじゃねえか。そうだ、てめえら学校に来るんじゃねえ。」
インド人貿易商の子シン・カーン「何だ、日本のダリット(不可触賎民)が食事を扱うのか。バラモンの僕は、そんなもの食べないよ。」
白医は、「もう許さないぞバイキング。腕を鍛えた腕鍛(わんたん)マン」と言って一旦ポーズを決め、「ワーン、パンチ!」と言って田畑と五味をぶっ飛ばした。
五味「いくらなんでも暴力はひどいじゃないか。」
白医「そういう君たちの、汚れと悪臭とばい菌による、不潔という暴力はどうなんだ。」
家中先生「まあ、落ち着きなさい。ここは民主的に解決しようじゃないか。クラスのみんな、田畑と五味が悪いのか、それとも白医が悪いのか、どう思う?田畑と五味が悪いと思う者は手を挙げて。」
田畑と五味を除く全員が手を挙げた。
家中先生「はい、多数決で田畑と五味の有罪が確定しました。二人には罰として、退学してもらいましょう。校長先生には私から話しておきます。」
白医「先生、色黒のシン・カーン君も退学させた方がいいと思います。肌の色でいえば、彼が一番バイキングに似ています。」
シン・カーン「何だと、それは人種差別じゃないか。」
白医「それじゃ、人種差別はいけないが、階級差別はいいということかな?」
家中先生「白医君、君の気持は分かる。だが外国人を退学処分にするとなると、外交問題に発展してしまう。どうか我慢してくれ。」
田畑と五味は、悲し気に帰宅しました。
そしてテレビアニメ「ワンタンマン」を見て、二人はこう思うのでした。なぜ自分は、ワンタンマンではなくバイキングの家柄に生まれたのだろうと。
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