第2話

案内されたテーブルに座ると、隣の席のマダム達の会話が耳に入ってきた。


「…あの子にしたら…たようなもんよね。」

「…でも…とりあえず…たわよ。」


途切れ、途切れに聞こえてくる会話に、いけないと思いつつも、ついつい耳を傾けながら、そういえば、昔もこんなことあったなーと思い返していた。


あれはいつだったろう?

父親の単身赴任先にGWを利用して家族で遊びに行ったときのことだ。


散々、観光して疲れ果てた両親を傍目に、子供だった自分は体力を持て余していた。

それを見かねて、大通り公園に行ったんだっけ?

両親はベンチに座って、自分は噴水が楽しくて、噴水の周りを走り回っていた。

案の定、転んで水浸しになってしまって、母を困らせた。


「いま、着替えを持ってきてないのよ。どうしよう?」

「あそこのデパートで何か買ってくるよ。」


そう言うと、父が公園から見えるところにあるデパートに買いに行ってくれたのだ。

濡れたままで風邪をひくといけないからと、父のジャンパーをかけてもらい、母と2人でベンチで待つことになった。


ほどなく、テレビ塔のほうから男女が口論する声が聞こえてきた。女性が何か叫びながら男性の頬を思いっきりバシンっと叩いたと思ったら、そのままこちらの方に走ってきた。


すぐに男性が追いかけてきて、女性は手を掴まれてしまった。女性の方は必死に振り払おうとするも、力で男性に叶うわけもなく、そのまま泣き崩れてしまった。


男性は女性を、私たちの隣のベンチに座らせると、何やら2人話しをしているようだった。


俄然好奇心の強い子供だった私。

当然のことながら気になって、気になって。

思わず目線どころか、体全体で2人の様子を見ていたのだろう。


隣に居た母に、「はしたないからやめなさい」と注意されてしまった。


あのあと、あの2人はどうなったんだっけ?



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桜の舞う季節に 白鳥ひなの @momonotoriko

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