第2話清掃員さんも好き

女性の清掃員さんが入社してこられました。40歳くらいの方です。

岸田さんは、なかなか力が入っておられます。また、

「美しい」

「きれい」

などと、褒めて、褒めて、の連続です。


私が、一度、立ち聞きしました。


「いやー、お美しいですねえ。天女が舞い降りて来たかのようですねえ」

「おきれいですねえ、お若いですねえ、エレガントですねえ」


「なんにも、でないわよ」


「ファッションがすばらしいですねえ。お若いですねえ。スレンダーですねえ」


「なんにも、でないわよ」


清掃員さんは、いくらおべんちゃらを言っても、お茶もお菓子も何も出ないわよと返しました。


それでも岸田さんは、褒めて、褒めて、褒め続けます。


二人の我慢比べです。岸田さんは、後に引きません。清掃員さんも、後に引きません。


とうとう、清掃員さんが勝ちました。岸田さんは、清掃員さんに一言も、声を掛けなくなりました。



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