第34話 乱入者
私とジェード様が飲み込まれたあの影はアンジュの魔法なのだろう。
ならばアンジュを捕まえ間違った記憶を植え付けてくるこんな世界を終わらせるしかない。
校内を探し回っているとふと聞き覚えのある声が聞こえた。
「……あなたが好きです」
桜がひらひらと舞い落ちる校舎裏。
そこで一組の男女が向かい合っていた。
目に入ってくふその光景と聞こえてくるその言葉に、強く胸が締め付けられる。
飛び出したくなる衝動をこらえて私は物陰に身を潜めた。
どうして……!なんでこんな事に……!
向かい合う男女の片方がアンジュ。
そして告白をしていたのはまさかのジェード様だった。
優しく甘い眼差しをアンジュに向けて微笑むのはジェード様。
「あなたが好きです、アンジュ」
繰り返された言葉に心臓が騒ぎ出してポロポロと涙が溢れる。
ジェード様がこの世界が植え付けてくる記憶のせいでそんな言葉を口にしてしまうのだとしても聞きたくなかった。
「嬉しい……私も好きです」
頬を染めて可愛らしく微笑んで見せるアンジュを抱き締めようとジェード様が手を伸ばす。
その光景が耐えられなくて私は勢いよく飛び出し叫ぶ。
「止めて!」
私の声に二人が反応しこちらに視線を向けた瞬間。
「うおりゃああぁーっ!!」
唸るような声と共に空から人が降ってきた。
その人物は持っていたモップでアンジュとジェード様をべりっと引き剥がす。
「ちょっと何すんのよ!」
良いところを邪魔されたアンジュが眉をつり上げて怒鳴り付けるとその人物はモップの先をビシッとアンジュに突きつける。
「それはこちらの台詞です!私の可愛い姫様を泣かせた罪は重いですよ!シスコン王子に変わってこのメアリーがお仕置き致します!」
ふんすと胸を張ってモップを構えているのは頼もしくも恐ろしい私の味方、メアリーだった。
「メアリー!?なんでここに……!」
しかも空から降ってきたよね!?
困惑する私を他所にメアリーはアンジュと対峙する。
「姫様の為ならば例え火の中、水の中、怪しい影の中までも馳せ参じます!さぁ、姫様を悲しませるそこの顔だけ女!私と勝負です!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます