第24話 不安
皆と解散した後、レイジは国王に報告しなければいけないと言ってテディベアのユーイとリリをつれて馬車で城に向かって行ってしまった、彼らを連れていったのは見聞きしたことを証言させる為だろう。
残された私はジェード様に寮までの道を送ってもらっていた。
「……私が狙われていたなんて思いもしませんでした。そのせいでアリス様にはご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
ジェード様の言葉に私は首を横に降る。
「迷惑だなんてそんな事ありません。それにジェード様は私が守りますから安心してください!……ジェード様が他の誰かの元に行ってしまうなんて絶対に嫌ですから」
アンジュがヒロインだろうが理解不能な『魔法』の力を持っていようが、ジェード様は絶対に渡したくない。
彼女がジェード様を手にいれたがる理由はわからないけど、そんなアンジュより私の方が何百倍も何千倍もジェード様が好きなのだ。
「……アリス様」
ふと名前を呼ばれて横を見れば目を細めて頬を緩めるジェード様の顔が目に入る。
「私はどこにも行きません。貴女の隣が、私の居る場所です」
そう言ってジェード様は私の手を取るとするりと指を絡ませる。
「なら、これからも……ジェード様は私の傍に居てくれますか?」
ジェード様の事は全面的に信頼しているがどうしても不安になってしまう。
ぽつりと呟くと、ジェード様は絡ませた指を軽く引いて寮とは反対の方向に歩きだした。
「ジェード様?」
訳がわからないまま連れてこられたのは人目に付かない建物の影。
通行人の死角に入るなり、ジェード様は絡ませていた指をほどいて両腕で包み込むように私を抱き締めた。
「あ、あのっ……」
急な出来事に羞恥心が追い付いたのは一拍置いてから。
慌てて声をあげれば耳元でジェード様が小さくため息をつくのが聞こえた。
……ひょっとして面倒な子だと思われた?嫌われたり、呆れられたりしたらどうしよう!
そう思うと迂闊に身動きが出来ない。
「……不安にさせてしまって申し訳ありません」
暫くされるがままになっているとジェード様が耳元で聞こえた。
「……どうしたら貴女の不安を拭えるのか、私には分からない……ですが、どうか信じてください。私が想っているのは貴女だけです、アリス」
切ない声に胸が熱くなる。
私が不安になることで信じられていないと思わせてしまったのだろう。
自分の迂闊な発言に反省しながらわかりましたと小さく頷くと、ジェード様は優しく頭を撫でてくれる。
その感触がとても心地よくてねだるように撫でる手にすり寄りながら、私は溢れてやまない彼への想いを口にした。
「ジェード様……大好きです」
私の言葉にジェード様は優しく微笑んで、言葉の代わりに額に優しく口付けを落としてくれた。
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