第25話 ガラスのコップ

 こんばんは。

 突然ですが、私はガラス細工が好きです。

 いつか体験工房で自分で吹いて作ってみたいと思いますが、なにせ、芸術的センスは持ち合わせていないので、散々たる結果になることでしょう。


 うちの食器棚にはガラスの器やカッティングの見事なグラスが並んでいます。もちろん、高いものは一つもありません(自慢)。

 手作り市とかで買うと若干お高いですけど、コロンとした形の一輪挿しとかペーパーウェイトは五百円以下でしか買わない主義です。

 余談ですけど、京都の手作り市は楽しいですよ。昔は木曜に梅小路公園であったけど、今はどうなのでしょう?行かないからわからなくて。気になる方は調べてみて下さいね。


 雑貨屋さんで海外のグラスとか見ると欲しくなって、ついつい買っちゃいます。

 ポルトガルの分厚いガラスにカッティングを施したグラスが特にお気に入りで、夏はそれにアイスコーヒーを注いで楽しみます。

 安物やけど、味わい深いガラスの厚さと曲線。ブドウ柄の光を屈折させるカット。

 アイスコーヒーを飲みながら、にやあっと笑ってグラスを指でなぞる、私はやや変態です。


 私は飾るより使いたい質ですが、薄いグラスは躊躇ちゅうちょします。

 なぜなら、以前、欠けたグラスを知らずに洗っていて、ぐるりと口を一周洗った時に運悪く親指の腹をスポンジと一緒に当てていたらしく、綺麗に切れてしまって、救急病院で三針縫った思い出があります。病院へ行くまでもないと思ったけど、なんか気分が悪くなってきて夜間に開いている病院を探しました。だって血が止まらないんですよ、スパっと切れて。


 血が駄目な私は、それ以来、ガラスの器が怖くて使えなくなったというお話。

 今はその痛みも忘れたので、またグラスも使っていますが、薄いのだけは緊張して使えない。切れたらどうしようって思ってしまう。


 だから、トルコから来た薄い小さな綺麗なカットの入ったグラスは、戸棚の一番奥で眠ったままです。何回か取り出しては、やっぱやめとこうって戻したりするうち、どんどん奥へ。好きだからあるのは覚えているのですが、使えない。

 こういうの、恋愛でもありますよね。

 カッコよすぎて恋愛対象にならない人。高嶺の花だから、遠くから愛でるだけでいいっていう。さすがに手に入れたらタンスに隠すってことはしないですけど。


 そんな私ですが、職場の来客用のグラスはちゃんと使います。

 薄くて、笹のカットが見事なそれは、大変お高いらしい。しかも不安定。

 下が重くて、上に向かって開いているような朝顔形のグラスですが、飲み口が広がっているから並べて置きづらい。下は確かに重いけれど、丸みがあって転びそう。

 でも手に持つと、良いんです。感触も、大きさも、繊細な感じも、良い。べっぴんというにふさわしい。


 しかし、これは高嶺の花ではない。

 やはり、憧れつつも愛着も持てるものが高嶺の花と言えると思います。手が届かなそうで届いちゃう、良心的なお値段。

 そう思うと、やっぱり恋愛とはちょっと違うようですね。


 


 


 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る