第21話 アンゼリカ

 こんばんは。

 アンゼリカ、いったい何のことだと思いますか。

 知っている人は多いかもしれませんね。

 お菓子作りの材料によく書いてある緑色のアレです。


 ちゃんと調べてみると、セイヨウトウキというセリ科の植物を密煮にしたもの、とあります。アンジェリカと呼ばれることもあるのだとか。

 もともと薬草なので、助けてくれる天使、という意味もあるとかないとか。


 私がこれを調べたのは小学生の時。調べた、というより、お菓子作るのに必要だから買った、というだけなのですが、そもそも、祖母がフルーツケーキを作ってくれる時には真っ赤なチェリーの砂糖漬けと目の覚める緑色のアンゼリカと、それらに比べたら地味な色のレーズンが必ず入っていたので、それで名前を覚えたのです。


 よく考えたら、祖母は明治に近い方の大正生まれ。よくこんなハイカラなもの知ってたな、と思いますが、新しいもの好きでおしゃれな人だったので、納得と言えば納得かも。私も祖母に似たら引きこもり体質発動しなかったかもしれません。

 閑話休題。


 そのアンゼリカ。実は祖母にフキだと教えられていたので、フキの砂糖漬けだとずっと思っていました。最近、なんか違うらしいぞ、と思って今回ちゃんと調べてみたわけです。

 フキじゃなかった。

 色は同じだけれど、フキはキク科です。セリ科じゃない。


 まあ、日本に生えていないものは代用しちゃえってことだったのでしょうか。

 おいしかったら、なんでもいいや。

 とはいえ、アンゼリカ、好きかと言えば、そう好きな方ではないのです。入っていたら食べるのだけど、おいしいか、と聞かれれば、漠然と、甘い、としか答えられないくらいの好み加減です。伝わるでしょうか、この曖昧な好み加減が。日本人らしい奥ゆかしさで答えてみました。


 さて、そんなアンゼリカ。最近フルーツケーキに入っているのをあまり見かけないような気がします。

 あの毒々しい、もとい、キラキラした緑色を有したフルーツケーキではなく、若干暗い色の多い茶色いフルーツケーキならよく見ます。

 人気がないのでしょうか。

 それとも生産減少とか。

 昔は着色料のせいで緑色なのかと思っていましたが、もともと緑色ですよね。

 どうして見かけなくなったのか不思議。


 色の辞典を出してきて、あの緑色を表現する言葉を探そうかと思いましたが、やっぱりアレは「緑色」というのがしっくりくる。

 単純明快で、甘い。

 そんな緑色。

 今まで私が食べていたのはフキの偽アンゼリカなのか、本物なのかはわかりませんが、もう一度祖母の作ったアンゼリカの入ったフルーツケーキが食べたいな、と思い出した今日この頃でした。

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