彼が得た切っ掛け
俺とルームメイトは、同じ部隊に配属された。
今、人類は、スパルトイと呼ばれる兵器たちと戦争を続けている。
彼らは特殊な力を使う。それこそ、魔法のような力だ。
ある者はスパルトイに触れられただけで体の内側から弾けて死んだ。
ある者はスパルトイの傍に居ただけで半狂乱になって自害した。
またある者はスパルトイが放つ光線に貫かれて焼かれ死んだ。
俺たちが戦っている相手は、まるでSFの宇宙人だと、話を聞いた時に俺は思った。
だが、スパルトイが世界に戦争を仕掛け始めた頃、俺たちにもまた特殊な力を持つ者が現れた。
曰く“授けられた者”。ギフテッドと呼ばれる超能力者だ。スパルトイの様に、多種多様な力を使う。
そして、それは俺とルームメイト、そして、葵もそうだった。
俺の能力は『記憶操作』といっても、操作するには、相手に触らなきゃならないし、操作前に相手の記憶を追体験する必要がある。俺は、この能力が嫌いだ。なにせ、こんなのでどう戦えば良いのか分からない。せっかくなら、戦闘向けの能力が良かった。
ルームメイトの能力は『治癒促進』だと言っていた。曰く「傷の化膿止め程度の能力」らしく、やはり戦闘には使えそうもない。
俺たち二人は、そろって戦線で戦うギフテッドのサポート部隊に配属された。
その配属に先に居たのが、戦乙女……葵だった。
彼女の能力は破格であると、スパルトイやギフテッドの研究をしていた組織の連中が言っているらしい。そのため、彼女が戦線に立ち、鼓舞することで人類を勝利に導くのだとかなんだとか……俺としては、彼女が危険な場所に配置されるのが嫌だった。
俺とルームメイトは、彼女の部隊の補佐に当たる部隊へ選ばれた。
作戦現場への輸送中のジープの中で、その部隊の隊長が俺の肩を叩き、笑いながら隣の席に座る。無精髭の中年の男性だ。
「よう新入り。お前、戦乙女とどんな関係なんだ?」
「関係? いえ、俺は……自分は、彼女と作戦中に一言二言交わした程度で……」
隊長はそれを聞いてうんうんと頷いていた。
「いやな、戦乙女直々にお前さんを指名して来たんだよ。もしかして、顔見知りなのかと思ったんだが、そうでもないみたいだな?」
「ああ、一応は……同じ高校に通う同級生、でありました。しかし、高校時代も面識らしい面識はなく、自分が一方的に見ていただけと言いますが……何と申し上げますか」
自分で何を言ってるのか分からなくなってきた。隊長は声をあげて笑った。
考えてみると、自分のこの発言はかなり、気色悪いのでは?
「そうかそうか。いやいいんだ。なに、野暮なことは聞かねえで置いてやるよ」
そういって、隊長は今一度肩を叩いて去っていった。
ルームメイトが、隊長が座っていた席とは逆の隣の席に座って言う。
「よかったね」
「何が?」
俺はルームメイトの方へ首だけ向けて聞く。
「戦乙女、直々の指名だって……指名の理由とか、聞きに行きなよ」
「ええっ!? それ……恥ずかしいし」
「あー、仕方ないなぁ」
するとルームメイトは立ち上がり、隊長に何か話しかけている。隊長は俺を一度見た後、無線を何やらルームメイトへ渡した。
その後知ることだが、ルームメイトが俺の名前を出して、葵に連絡を取り、食事に勝手に誘ったらしい。
もちろん、直後から俺は周りから否応なしに注目されることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます