本と電子とリアルが激動して逝く。

白城ショウ

プロローグ  始まりのわたしー夢ー

幼い頃、くり返し見た夢があった。


周りは極彩色で、子供受けはいいけれど、ある意味で毒気さえ感じる程の――目に痛いカラフルさ。

ボールのプールに、動物の着ぐる身、ピンクの小さなスベリ台に、黄色のブランコ。(これまた、学童児以下が使うサイズ感だ。)


部屋は奇妙に狭く、窓もなければ…ドアらしき物もない。


そこに、わたしを含めて何人の人間が居ただろう。子供が、5~6人か、もしくはもっと居たのか。ボールのプール内には、まぁ、そのくらい 遊んでいる幼い子がいる。この部屋は狭いくせに、変に色づいたライトの所為か、視界が悪くて良く見渡せない。


自分自身もまだ、6歳か7歳程度だ。でも、そこに大人も居ることに気づいてる。

独りだけ、この部屋に不安を抱いていた。嫌な予感しかしなかった。

だって この部屋…いや、空間は、なんだが……『変』…


(?)


手に、角張ったものが、フイに当たった。ここはボールの海だから、そんなもの当たる訳がない。でも… それは多分。いくら、変に洞察力があったって、子供は子供だ。手に触れたものが、何か、見る。むしろ大人であったって同じことをするだろう。


『ピッ ピッ ピッ ピッ』 四角い長方形で何本かコードが走ってる。電子的な数字が、光って、その物体の、最後の時を、カウントダウンする。―――赤い、数字―…


ドッ…  心臓がバクバク言う。けどそれは、自分が死ぬだろうという恐怖じゃなかった。着ぐる身の大人に、叫ぶ…――声が出ない?―-周りの子供だけでも遠くに…身体が思うように動かない。


バク、バク、バク、バク、 必死に、着ぐる身の大人に、表情と、ソレに触れていない手で、訴えようとしても、伝わらない。


(全員、死ぬの?)無邪気に、楽しそうに遊び続ける子供たち、キャッキャと言う声が、何だか気を遠くさせる。本来頼りになるはずの大人は、この数秒後、起きる惨事に、気づきもしない、無責任さだ。




”ピ„   最後のカウント音  やっぱり、わたし以外、だれも気づかない。



くやしい、と思った。死ぬことに対してより、何で、わたしだけ、何にも気付かずに、ギリギリの瞬間まで、のんきにあそんで、いられなかったの?



                              ゼロ




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