限りなく短い短編集

璃央奈 瑠璃

好きなのは幽霊の彼女

桜の花びらが舞い散るような雪の日。ぼくは幽霊に恋をした。


彼女は未練があるとかないとか、神様がいる、いないなんて視点じゃなく、実に楽しそうに幽霊をしていた。


いったい彼女には世界がどういう風に写っているのか聞いたことがある。その答えは「なにも変わらない」酷く退屈しているかのような声音で、そしてそのままどこかに行ってしまった。


ぼくは高校生。彼女はなんだったろう? 歳は近い気がする。ひとつ分かっていることは、彼女は常に病衣を着ていてることだ。きっとこれを追求するのはマナー違反だしぼくも彼女望まない。


彼女はなんでぼくしか見ることができないのだろう。ぼくは、いわゆる「霊感がある」とかそういう類は持ち合わせてないはずだ。だって彼女以外の幽霊なんて見たことなかったから。


なんで好きになったんだろう。ぼくには解らない。でもやっぱり彼女のことが好きらしい。


そして次第に彼女の姿がうっすらとぼやけてきた。


あぁ。ぼくは悲しいんだ。


だって幽霊は彼女じゃなくてぼくだったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る