三章 3 ファーグはアレーに聞いた
※WARNING※
この章は、現在、修正を行っています。
ストーリーを早く知りたい方以外は、お待ち頂くことで、より一層、お楽しみ頂けるかと思います。
「ただいま……」
エリアスによる拘束からようやく解放されたファーグが家に帰ったのは、夜の静けさが身にしみるような時間であった。
依頼された歪みの捜索は明日から行うことにして、その日は長時間待ったことに加えて、気が抜けるほど一瞬で終わった相談内容のやるせなさから、すぐさま帰路についたのだ。
体を引きずるように部屋へ入ると、予想に反して室内は照明がついていた。
「おかえり」
部屋にある机で本を読んでいたアレーが、顔を上げて微笑んだ。
「アレー……」
「おお、どうしたの?」
ほとんど倒れるようにして、アレーへと近づいたファーグは、そのままアレーの太股を枕にするように抱きつく。
自分の問いにも無言で足を離そうとしないファーグに、アレーが驚いた様子を見せたのもほんの一瞬で、読みかけの本を机に置くと、ファーグの頭をなで始めた。
「よしよし、大変だったね」
なぜだか分からないが、たったそれだけでファーグの目には涙がこみ上げてきた。
しばらく、なでられ続けていると、安心しきったせいか、ファーグのお腹からは空腹の訴えが聞こえてきた。
お互いに顔を見つめ合った後、恥ずかしさから、顔を赤くするファーグに対して、アレーは笑い声を上げる。
「ご飯でも作ろうか」
ファーグを自分が座っていた椅子へと誘導しながら、アレー自身は立ち上がりキッチンへと向かう。
壁に掛けられていたエプロンに手をのばしたアレーは、何を作ろうか悩みながら、ファーグが落ち着き始めたことを目の端で確認する。
「何があったの?」
自然なアレーの問いかけに、ファーグは今日一日の過ごし方を話した。
「なるほどね……」
調理を進めつつ、話を聞き終えたアレーは、共通の友人である、エリアスの顔を思い出す。
昔から人を待たせたり、急に呼び出したり、何かと自分勝手な奴ではあったが、それはしばらく連絡もとていなかった今でも変わらないようだった。
「ね? ひどいと思わないか?」
いつも通りに戻った様子のファーグがアレーに同意を求める。
「そうだね。待たせたあげくその無理難題は……」
鍋を火にかけたまま、しばらく調理の手を離しても大丈夫だと判断したアレーは、エプロン姿のままでファーグの元へと戻ってくる。
「でも、探すんでしょ?」
「なし崩し的に……」
「そんなに待たされておいて、依頼を受けるなんて、ファーグは偉いと思うよ? 僕なら断っちゃうだろうな」
感心した様子でしきりに頷くアレーを見ていたファーグからは、慰めようとしている姿が可笑しかったのか、自然と笑顔がこぼれた。
笑うファーグの気持ちが分からないアレーも、首を傾げながら併せて笑う。
「ありがとう」
「どういたしまして……?」
直後、セットしておいたキッチンタイマーが鳴り、アレーがキッチンへと戻ると、鍋の蓋を開けたのか、良い香りがファーグの元を訪れる。
「カレー?」
「昨日のポトフをアレンジしてみたよ」
ファーグがダイニングへ向かうと、アレーがカレーを二皿持ってきた。
「食べてなかったの?」
「ファーグと食べなきゃおいしくないからね」
自らへの直球な好意に、ファーグは恥ずかしさとともに、心が躍ってしまう。
幸せというのは、こういうことなのだろう。今日起きた自分の出来事まで些末なものに思えてくる。
顔が赤くなりそうな予感に、ファーグは話題を変えるように、食事を取り始めた。
「今日はレコとどこに行ってたの?」
「本屋を中心として、いろいろ買い物を。言わなかったっけ?」
そういえば確かに聞いていた。お昼間に念話をされ、夕方にも会話をしたのだった。
「そうだった」
「ファーグの本も忘れずに買っておいたからね」
自分が頼んだことすら忘れているとは、よほど、精神疲労がひどかったのであろう。そうに違いない。
無理に納得しようとするファーグに、アレーが思い出したかのように話していなかったことを語り始める。
「そういえば、今日、不思議な子にあったんだけどね?」
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