第7話 幸岐と笙花
「…幸岐ちゃん、煮物のおかわりある? これ凄くおいしい」
「あっ、はい。今お持ちしますね」
ぱたぱたと台所へ消えた幸岐を横目で見送った笙花は徐に立ち上がった。
「ちょっとお花摘みに行ってくるねん」
「なぁにがお花摘みだ三百うん歳がぶりっ子しやがって」
「よぉし小烏は帰ってきたら覚えときなよ」
☆ ☆ ☆
「み~ゆ~ちゃんっ」
「…笙花さん」
「〝例の話〟なんだけど」
台所の扉を閉め、笙花は煮物を盛る幸岐の隣に並ぶ。
誰かに聞かれないように、声量を落として話し始めた。幸岐は黙ってそれを聞く。
「…前例はいっぱいある。けど、成功したって話はほんの一握り。しかもその一握りも、信憑性がないものばっかり」
「…でも、私は…やらなきゃ、いけないんです」
お玉を置き、強い光を宿す瞳で、幸岐は言い切った。
「うん、わかってるよ。わかってる…。みゆちゃんの気持ちは、その想いだけは、斎じゃなくてアタシが一番わかってるから」
大丈夫と言うように、笙花は幸岐を抱きしめる。
「まあ、これは一応経過報告ってだけで、また探してみるけどねん。…斎には、言ってないよね?」
「旦那さまには…すべてが成功したら、お話しします」
「…うん。それがいい」
幸岐の頭を撫でる。
本当に大きくなった。成長した。斎を見て震えあがっていた、あの頃から。
弱々しかった光は、今では強く煌めいている。
それはきっと、愛するひとと同じ道を歩みたいから。だから幸岐は。
「…さぁて、戻って小烏絞めるかなぁ」
「お酒も、もう少し持っていきましょうか?」
「えっ本当? さすがみゆちゃん気が利くぅ!」
だから幸岐は。
愛するひとと同じところに行くために、同じ道を、同じ速度で歩むために。
———〝不老不死〟になる方法を探している。
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