第3話 幼馴染二人目

「いらっしゃい、狛。…そのまま来たのか」


扉の外には斎よりも長身で黒髪を七三に分けた男性が立っていた。彼がもう一人の幼馴染、はくだ。


「ああ…。本当に有り得ない、あの禿頭」

「まあ入れよ。笙はもういる」


狛が居間に入ると、漬物を摘みながら笙花がこちらに向いた。


「おっ、ワンちゃんお疲れ〜」

「お前は良いなぁ呑気で」


ネクタイを緩めながら、狛は空いている座布団に座る。

台所から、たくさんの皿を盆に乗せた幸岐がやって来た。狛を見つけると、お盆を卓袱台に置き頭を下げた。


「お仕事お疲れ様です、狛さん」

「あぁ幸岐ちゃんお邪魔します。ごめんね、急に」

「いいえ、ご飯はみんなで食べた方が美味しいです」

「新婚なのにねぇ、笙とかめちゃくちゃ入り浸って…」

「ないよ! 失礼な! アタシだってねぇ、そのくらいの常識はある!」

「どーだか…」


喚く笙花と溜息をつく狛。

新婚という単語を聞いた幸岐は、ぼっと顔を赤くした。


「み、幸岐ちゃん!?」

「あ、いえ何でもないです! えっと、お酒! お酒持って来ますね!?」


そう言い終わる前に、幸岐は立ち上がって居間を出た。


「…小烏ぅ、何したの〜?」


ぽりぽりと胡瓜を咀嚼しながら、笙花は同じく顔の赤い斎を見た。


「…別に何もしてねぇ」

「へええええ? …まあいいよ。夜は長いしね!」

「聞き出す気満々じゃねぇか」


斎が溜息混じりに呟く。頬はまだ赤い。


「いいなぁ斎は。俺も結婚したいなぁ」

「どうしたん狛? 珍しいじゃんそんなこと言うなんて」


笙花が首を傾げる。

狛は煮物に箸を伸ばしながら答えた。


「前から言ってた女の子を、食事に誘った」

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