嘘という鏡の世界で、君は叫ぶ

ぐみねこ

 ――――木之瀬ゆづなの嘘――――


 中学の頃、確かに友達がいた。すごく仲が良かった。でも。


「ねえあの子、調子乗ってない? 貧乏なくせに、木之瀬さんに近づくとかさ。お金目当てかっつーの」


 そんな、友達に対して叩かれた陰口から、私は嘘をついていくことに決めた。

 わたしは木之瀬グループの令嬢で、親にもさんざん言われてきた「木之瀬家の令嬢としてのプライド」を、無視していた。そのせいで、私が友達になった人はみんな、周りから冷たい視線でみられるようになった。


 自分の本当の気持ちを隠し続けることが、私のやるべきことだ。


「ゆづなちゃんだよね! せっかく同じクラスになれたんだし、一緒に帰ろうよ!」


「ごめんなさい。私があなたと一緒に歩いているところを見られると、木之瀬家としてはしたない姿をみせることになるので、お断りします」


「えっと……なにそれ?」


「迎えがきているので帰らせていただきます」


 本当は一緒に帰りたいし、迎えなんていらないし、友達もたくさん作りたい。

 私は女の子なんだし、恋だってしたい。実は気になってる人だっている。

 だけど、それは叶わない夢で。許されないことで。

 そんなことをしたら、また誰かが傷ついてしまう。その前に、私は冷めた空気を作り出す。


 だから、私はこんな世界に来てしまったのかな。



 ――――高塩春季の嘘――――


 嘘をつくことから逃れられなくなったのは、中学1年のころからだったか。

 明確な理由はない。中学の頃、不良で一匹狼だった俺に対して、その場の空気に馴染めと、よく言われたからだろうか。

 どうせそんなことをしても変わらないだろうと思っていたら、やってみたら上手くできすぎなくらい上手くいった。上手く行きすぎたせいで、その生活……日常から抜け出すことができなくなった。

 

 俺の嘘記録

 1 友達(仮)を作った。(ああこいつ、嫌いだな)と思う奴から(名前がわからないや)と思う奴まで、俺は徹底的に笑顔をみせた。

 2 彼女を作った。クラスの中心である女子に告白をした。同じくクラスの中心である俺は、あっさりとOKをもらえた。

 3 進路を決めた。友達(仮)と同じ大学にした。そこで一緒にサークルやろうぜとか言った。

 4 木之瀬ゆづな。俺のクラスの学級委員長だった彼女の存在を、完全に無視した。周囲がそんな感じだから、なんとなく。……本当は、少し気になっていた。

 5 愛想のいい、リア充のような自分になっていた。そして、それが自分だと、自分にも嘘をつくことにした。


 俺は、周りにあわせて嘘をつく、そんな人間だったのだろうか?


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