桃太郎 -オーガサイド-
10介
第1話
俺の名は鬼丸。鬼の生き残りだ。
鬼ヶ島で暮らしていた仲間たちは桃太郎という人間に殺された。
桃太郎。何百もの鬼を切り捨ててきた剣豪で、桃から生まれたというクレイジーな出自を持つ野郎だ。
俺たち鬼が人間たちを襲って、食料や金品を巻き上げているという噂を聞きつけ、奴は鬼退治をするようになったのだという。
その際、野郎は「きびだんご」なる怪しげな食べ物を使い3匹の獣を懐柔。鬼に対する強力な助っ人として手駒にした。
犬、猿、キジといまひとつ統一性に欠ける連中だが、実際奴らの活躍によって俺たちは壊滅に追い込まれている。恐ろしいポテンシャルを秘めていたのだろうと推測できる。
桃太郎一味が鬼ヶ島に乗り込んできたとき、俺は幸か不幸か釣りをしに海へと出ていた。大量の釣果を抱えて帰ったときには、すべてが終わった後だった。
すぐにでも復讐してやりたかったが、人間は数が多い。俺一人では多勢に無勢。やむなく人里から離れた山に籠もり、力を蓄えることにした。
半年後、鬼ヶ島をレジャーパークに開発する計画が持ち上がっていることを知った。
人間め……俺からどれだけのものを奪えば気が済むというんだ。
しかも聞くところによれば、レジャーパーク開発は桃太郎を育てたジジババだという話だ。桃太郎の活躍に乗っかって、今や国内有数の資産家。わかりやすく調子に乗ってるのがイラッとくるぜ。
とにかく鬼ヶ島だけは、奴ら人間どもに渡すわけにはいかない。あそこは俺が生まれ育った大事な場所。絶対に守り抜かなくてはならない。
俺は筆をとり書状をしたためた。
俺からすべてを奪った張本人……桃太郎への果たし状だ。
俺が勝ったら鬼ヶ島を返してもらう。ジジババの息子である野郎が頼めば、開発計画も止められるかもしれない。その一縷の望みに賭ける。
桃太郎が勝った場合は、素直に俺の首を差し出す。生憎、賭けるものはそれしか持ち合わせていないんでね。鬼ヶ島のためなら、散っていた仲間たちも納得してくれることだろう。
問題はこれを桃太郎が受けてくれるかどうかだが……杞憂だったようだ。
やつの手下であるキジが、果たし合いを受ける旨が記された書状をくわえて現れたのだ。
場所は……鬼ヶ島。
まったく、おあつらえ向きの場所を用意してくれるぜ。
俺は父の形見の金棒『金剛力』を手に、決闘の地へと赴くのだった。
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