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誰もいない図書館で本棚の数を確かめた

あの日は雪が降りそうに寒い日だった

検索機を拵えてまで本をどこにもやらないようにと四苦八苦してる


なくなっても新しいものがすぐに補充されますよ

脚立に乗らなければ最上段に届かないのに

本棚には限りがあるのだよ

補充されてもすぐに古くなって消えちゃいますよ

そしたら、また新しいのを入れようね


光が差し込んだら

本は日に焼けてしまうのに

本を焼くのは人を焼くのと同じだと教わった


じゃあ、私が焼かれたら

ひとつの本が焼かれるのだろうか


そのときは、あの日の本棚の

一番右上隅にある赤い表紙の本を焼いてください

そして、空色の表紙を空いたそこに入れてください

約束です、約束ですよ


雪は降ってはいなかった


けれど、どうしても、約束ですよ


本を焼いたんですからきっと温かい

三十六度四分くらいですが

平熱でしたね


消えた本はどこにいった

焼かれた本は灰と空気になっても残る質量保存の法則

表紙をずっと見て回っても私の名前はどこにもなかった


すみません、雪が酷いので

私はあそこに入れてほしかったんです


こんなにも震えてるのに降ってくれない雪が酷いので


私の本をそこに入れてくださいませんか



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