第64話 ゆん盛大にキレる
「ゆんちゃん、大丈夫?」
「ん…大丈夫です」
「ゆりを呼びましょう」
そういうと由奈はゆりを探しに行った。
わたしはどうしたらいいんだろう…
由奈とゆりはしばらく戻ってこなかった。どうしたのかと思ったゆんは二人を探しに居間を離れた。すこし離れた部屋から声が聞こえた。部屋をノックしようとした時、話し声が聞こえてタイミングを逃した。
「そう、ゆんはそう言っているのね」
「ええ。わたしが生みの親だということに関しては告げたことを怒ってはいなかったみたい。なんとなくわかっていたからと。でも詩音君のことは…」
「そう…わたしも健さんも二人にまかせると決めているんだけど、詩音もゆんも今それほど悩んでいるとは思っていなくて…」
え?お母さんもお父さんもお兄ちゃんの気持ちを知っていたの?
「詩音がわたし達にゆんに対する気持ちを言ってきた時、わたし達はこんな日が来ると思っていたの。詩音がどれほどゆんを大切にしてきたか知っていたから。だから、ゆんはわたし達の子ではないと教えたの。詩音は自分がやる、自分がきちんとゆんに伝えると言ったからまかせたのよ」
「でもゆんちゃんは戸惑っているわ。兄として好きではない別の感情にも、それを受け入れてよいのかどうかについても…」
「そうなのね…最近ゆんの様子がずっとおかしかったのはそのせいなのね」
何言ってるの?お母さん何言ってるのよ???
「そうそう、さっきレンが送ってきたメールをみて驚いたの。これ見て」
「詩音??????」
「そうなの。レンが日本に来ることが出来なくて空いていた時間に受けた依頼が詩音君の撮影だったそうなの」
「え???どうして?どうして詩音がレンさんに…」
「本当にね、巡り合いってわからないものね。詩音君を連れてきたお友達、依頼を出したお友達によると、詩音君が髪の毛を切る決心をしたから、それじゃ記念に写真を残しておくと最高じゃないかなって思って、ダメだと思いながらもレンにオファーしてみたそうなの。詩音君があまりにもハンサムで素敵だから、良いフォトグラファーにお願いしたかったみたい。その方のお友達で詩音君の衣装を選んで一緒に付いてきた方は、業界では知られたコーディネーターで、レンも知っている人だったの。そんな人が一緒についてくるくらいだからとビックリしていたら、詩音君、本当に素晴らしかったと。被写体としてこれほどそそられる少年は初めてだったと言って、撮った写真をいくらか送ってきたのよ。あなたの息子よ、見て欲しいわ」
「詩音がこんなに素敵だなんて…レンさんの腕前ね」
「詩音君が素晴らしいのよ。元が良くなければ騙すにも限界があるわ。いくら修正可能だと言っても。レンはほとんどいじってないって書いてるわ。少し露出を調整して、ノイズを減らしたくらいだと」
「詩音が帰ってくるのが楽しみだわ。自分の息子だけど、この写真は本当に素敵ね…」
は???何話してるの???お兄ちゃんが髪切ったって?それで記念に写真まで撮ったって???
バンっっ!!!!!
ドアを思い切り開けるとゆんは言った。
「その写真見せて下さい」
由奈とゆりが見ていたiPadをひったくるように手にしたゆんはそのモニターを凝視した。思っていた以上にかっこよくてゆんは驚いた。プロが撮ると同じ人でもこんなに違うのかと。自分が土曜日イベントで撮っていた写真がふと頭の中をよぎった。
しかし、それ以上にゆんに言うことなく髪を切ってしまった詩音に対しての怒りが収まらなかった。あれだけ頼んでも切らなかったのにと。
「お兄ちゃんなんて大嫌い!!!おかあさん、わたし帰るね、写真撮影も要らない。子供じゃないから帰る方法くらいわかるから放っておいて!!!」
そういうとゆんは部屋を出て行く。
「ゆん、ゆん、落ち着きなさい!」
追いかけるゆりの呼びかけにも応えず、自分のバッグをいそいで抱えて出ていくゆんの様子が見て取れた。
ゆんは行ってしまった。
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