わたしたち生き延びられる?

かむら

第1話 うちのお兄ちゃん

週末である。

週末はわたしが勝手にイベント決行することにしてる。そう、お兄ちゃんを最高にキメさせて写真撮ってインスタにアップする作業。わたし的には最高に楽しい時間である。お兄ちゃんがどう思ってるかは無視無視。いちいち聞いてたら何も出来ない。


わたしのお兄ちゃんは最高にイケてると思う。んだけど、本人は何事にも頓着せず、学校ではひたすらダサい部類だと思われてる。いやいやいや。違うんだな。身長183センチ、細身、何もしていないようで実はこっそり体力づくりもしてて、外では本当におどおどそっけないけど、うちではよくしゃべるし笑う。本当に素敵なお兄ちゃんなのだ。物知りだし、いろいろ文章書き溜めてたり、音楽作ってみたりしてるし、でもそんな姿を知っているのはわたしと家族だけなのだ。もったいないじゃない。でもお兄ちゃんはそんな姿を知られたくないって頑なに言うから、わたしが一生懸命説き伏せて、正体を明かすことなく写真だけわたしのインスタにアップさせてくれないかなって粘り強くお願いしたのだ。本当に本当にいやいやながらとにかく素性を明かさないならという条件でオーケーしてくれたんだけど、毎週末本当に苦労しまくってる、だってお兄ちゃん興味ないんだもん。お兄ちゃんが興味あること以外は。さらには自分的に本当にイケてるのでいかに素敵に見せるかに毎回苦労してるんだよ、本当に。知らないだろうけど。


「おにーちゃん!!!週末だよ!!!」

「別にどうでも」

「良くなーい!!!!!」

「予定があるなら優先させるけどないでしょ」

「ないな」

「それじゃ恒例の行ってもいいですか?」

「勝手にしろ。ふんっ」


俺はいつでも妹の言うなりである。気がついたらそうなってた。俺は物事に頓着しない。というか興味がない。自分が好きだなと思うことを地道にやってみてるだけ。それで将来が開けるかとかそういうのもどうでもよくて、ただ親と約束した勉強だけは出来るところをキープしつつ、それ以外は気になることをあれこれやってみたいだけである。今のうちに。何が自分にとってベストなのかまだわからないから。だから、妹の遊びにも付き合ってる。何の目的かも知らない。ただ一緒に遊んでるのは楽しいのだ。


実際妹は可愛い。正直本当に可愛い。自分の審美眼が世間の評価に見合ってるかどうかもわからない。でも妹は可愛い。無茶振りされても可愛いのだ。彼女が俺のことをどう思ってこういうことをしてるのかもわからないけど、アップするたびにニヤニヤしてるからまぁ大丈夫なんだろうと思うことにしてる。約束だから、俺の正体は明かされてはいない。妹もアクセス数とかコメントの数で判断してるんだと思う。いいよ、君が気分良くなるのなら。うん、君が良い気分ならそれでいいんだ、俺はどうでもいいんだよ。

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