アイツらはわたしたちを理解した

クソ、ヤツら。


ボスめ、気をつけろって言ってたのはこのことか。

まったく、気をつけろと言われてもこれはどうしようもないぜ。


わたしが戻らなかったら誰かが探しに来るだろう。

それを見越してこの音声を残す。

わたしはそのために、できるだけ安全なところまで行って死ぬか、

死なずに上まで戻らなきゃならない。



あー。

長月と望月がやられて、

死体は回収できなかったわけだが、

その結果ボスと如月の予想通り。

まったく気にくわないけど。

それでアイツらはわたしたちの精神構造を理解した。


最初にヤられたのは、水無月だ。

あいつは突然、文月を押し倒して首を切り裂いた。

横一文字に一発でな。

一瞬だった。

文月は、即死だったと思う。

水無月はそのまま、文月の胸と腹を掻っ捌いて、内臓を引きずり出そうとしてた。

わたしと睦月が二人掛かりで引き剥がしたんだが、あいつは振り切って何処かへ行っちまった。

追いかけようとしたところに、運悪くザイゴートが来た。

前見た個体と違って足が生えてた。

口らしい器官もな。

それで何かを呟いてるように思えた。

ヤツが現れた途端、頭が重くなった、というか思考がまとまらない感じがして、めまいもするし。

変な気分になった。

単に見た目が気持ち悪いとかそんな理由で今更精神に異常を来したりはしない。

すぐに理解した。

睦月もだ。

コイツはわたしたちの精神に入ってこようとしてるってことを。

わたしと睦月はなんとか正気を保ちながら、応戦してその場を離れた。

でも、ヤツはしつこく追ってきた、別のも連れてな。

全部で三体だ。

どれも異常な成長の仕方だ。

腕が何本も生えたヤツ、デカい目がくっついたヤツとかな。

二人でどうにかなる相手じゃない。

水無月も放っておけないし。

そうすると睦月が、わたしだけは逃げるようにって囮になった。

自分のカメラをわたしに渡してな。

そしてドアを閉めたんだ、わたしは戻ろうとしたが、睦月はドアにつっかえか何かして開かなくしてた。

で、わたしは急に一人になったもんだから怖くなってその場を離れた、それに別の個体の声が遠くだったが聞こえてたから。


それでしばらく走り回ってたんだが、突然足がもつれて倒れちまった。

そのときはじめて気づいたんだよ、自分の腹にナイフが刺さってることに。

水無月だ、取り押さえた時にやられたんだ。

だから睦月はわたしを逃がそうとしたんだよ。

まったく情けなさすぎて泣きそうだ。


痛覚マスクも考えものだな。



このままいくと、自分の命は長くないってのが自覚できてくるのがイヤだな。

でも、

なんとかこの情報はみんなのもとに届けないと。



クソ、血が。

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