ふたり旅
勝利だギューちゃん
第1話
僕は学校へ行っていない。
いわゆる引きこもり。
友達はいない。
でも、寂しいと思った事はない。
それが、僕の全てだからだ。
むしろ、下手に干渉されたくなかった。
いつしか、1人でいるのに慣れてしまったのだ。
しかし、見かねた両親が、僕に命を出した。
「お金を貸してやるから、全国を旅してこい」というのだ。
気が乗らなかったが、ここにいても同じなので、承諾し、旅に出る事にした。
「1年かけて、回ってこい」というのだ・
「刺激を受けろ」
そう判断した僕は、早速、旅に出る事にした。
選んだ選択肢は、鉄道。
ていうか、それしかなかった。
鉄道は嫌いではないので、それでよかった。
但し、「新幹線は使うな」と、念を押されたが・・・
まず私鉄の最寄り駅から、JRのターミナル駅まで向かう。
ここから、在来線にのるわけだが・・・
まずは、どこへ行こう。
久しぶりに海がみたいな。
そして、海へ向かう列車に乗った。
4人掛けのボックスシートに腰をおろす。
これから、どうしよう?
まあ、ゆっくり考えよう。
先は長い。
「ここ、よろしいですか?」
「えっ?」
見上げると、ひとりの女性がいた。
20代前半くらいか?
僕よりは、年上だろう。
「おひとりですか?」
「ええ」
「私もなんです」
女性は、微笑む。
「お若いですね。おいくつですか?」
ウソをついてもしょうがないので、僕は正直に答えた。
17歳と・・・
「じゃあ、私より年下だね。私は、22歳。女の子」
女の子を強調された。
そして、互いの事情を話す事になるのだが・・・
「同じだね」
「そうですね」
悪い人ではなさそうだが、どうも、人との会話は苦手だ。
「もしよかったら、一緒に回らない?」
「えっ」
「日本全国を」
睨みつけてくる。
拒否権はないようだ。
「じゃあ、よろしくね。私は凛。戸辺凛(とべ りん)。君は?」
「僕は、勇気、日向勇気です」
凛さんは、手を差し伸べてくる。
「よろしくね。勇気くん。私の事は、凛でいいよ。それと敬語は禁止」
「うん、よろしく凛」
がっしりと、握手をした。
凛は両手で僕の手を握る。
握力は強いようだ。
相手の手を両手で握るのは、自分がその相手よりも、上になりたいという、意味があるようだ。
これは、旅行中振る舞わされるな。
でも、それも面白そうだ。
楽しい思い出になるように、祈ろう。
ふたり旅 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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