Lv.6 紛う事無き変態
ここは魔王城の弓技修練場。
建前上はアーチャースケルトン向けの訓練施設だが、ぶっちゃけライラ姫専用である。
『日々鍛錬、御苦労だなライラよ』
『あ、魔王様お疲れ様です』
爽やかな笑顔で汗を拭うライラ姫に声をかけつつ、奥に置かれた
『………』
『どうされました?』
『いや、なんでもない……』
こっわーーー!
見た目も行動も、全部こっわーーー!!
『ふむ、エルフ王女の闇堕ち……なかなか
『相変わらず
だが、このタイミングで大臣が現れたという事は目的はひとつであろう。
『勇者達の動向はどうだ?』
私が問いかけると、大臣は水の入った器に映像を浮かべた。
『勇者一行は現在レベル6で"神々の時計塔"を駆け上がっている模様です』
『時計塔の推奨レベルは?』
『25ですな』
……?
『もう一度聞くが、勇者のレベルは……』
『6ですな』
なんだか頭痛がしてきた。
『一体どうやって今まで生き延びてきたんだ……!』
『これまで勇者との戦いに挑んだ者達の証言によると、奇妙なタイミングで硬直したかと思ったら唐突に会心の一撃を放ってきたとか、フェイントが不規則すぎて全然攻撃が当たらないだとか。皆、共通して気味が悪いと不満を漏らしております』
やっぱり意味が分からない。
それと、さっきからずっと気になっている事がある。
『奴らはどうして、ずっとスライディングをしているのだ!? しかも
そう、勇者連中はさっきから塔をひたすら登っているのだが、何故かスライディングをしながら異様な速さで進んでいるのだ。
そんな私の問いかけに対し、大臣が口を開くより先に、ライラ姫が映像を指差して答えた。
『登る時に減速させないための地形効果無視が狙いですね。スライディング終了モーションの直前にディレイキャンセルする方が走るより速いんです。これ、スカートが汚れるから凄く嫌でした』
『さすが
私が突っ込むも、ライラ姫は困り顔でため息を吐くばかり。
最上階で待つ『時計の神』だって、スライディングしながら階段を猛スピードで登ってくる勇者連中にバッタリ遭遇しようものなら、腰を抜かして驚くに違いない。
御高齢な方にそんな心臓に悪そうなドッキリイベントは勘弁願いたいものある。
『まあ地形効果無視と言っても、停止地点で影響を受けてしまうので、毒の沼などはすぐに沈んじゃって意味が無いんですけどね』
停止地点で……ということは、つまり『スライディング開始と移動途中は影響を受けない』という事か。
それ、もしかして……!!
『大臣! 大至急、玉座の間の「勇者が踏むと魔王様を召喚する床」をはじめ、魔王城の全トラップを点検せよと通達を出せ! 急がぬと魔王城が奴らに蹂躙されるぞ!!』
『なんですとっ!?』
< 本日の魔王城修繕報告書 >
1.「勇者が踏むと魔王様を召喚する床」をスライディングで回避出来る不具合を修正。
2.前方向へのスライディングだけで回転床エリアを突破できる不具合を修正。
3.魔王様の書斎(無断で絶対開けるなルーム)のドアをスライディングで突破できる不具合を修正。
(追伸)
さすが魔王様です!
以上。
『何故だろう。誉められても全く嬉しくない……』
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