第155話 ルツ ボアズの買い戻し

 毎日のようにルツは、ナオミのためにボアズの畑で働きました。この二ヶ月間、ボアズはルツの勤勉さや謙遜さを快く見ていた事でしょう。


 ある日、ナオミはルツに言います。

「あなたが安心して暮らせるように、結婚相手を見つけてあげたいの。幸せになって欲しいの」


 働き者で可愛い嫁のために、ナオミはルツの幸せを願います。そして一つの提案をします。

「ボアズは脱穀場で作業しているから、今夜ボアズの所に行くように!体を洗って香油を塗り、外衣をまとってボアズの寝るところに行くように!そしてボアズの足元の服をまくって横になりなさい!」


 収穫が終わり、脱穀の時期はその畑の主人が泊まりで仕事をします。盗まれないように監視する目的もあります。ボアズは必ず仕事場の近くに寝泊まりしている事でしょう。


 ボアズは買い戻しの権利を持つ者の一人です。これはまたモーセの律法が関係しています。

「人が子を残さず死んだ場合、買い戻しの権利を有する者がその妻をめとり、死んだ者の名を残すように」


 ナオミはこの律法、義兄弟結婚について考えていました。ルツも夫との間に子供がいません。ナオミは夫エリメレクの名を残すために、ボアズとルツの結婚を考えたのです。


 ナオミは高齢で子供を持つことが出来ません。なら、ルツにそれを託せば、エリメレクの子孫を残せるのです。


 ルツはボアズの寝床に夜這いしてエッチをするのでしょうか?いいえ、不道徳な目的ではなく、求婚です。けどルツはまだ40代です。ボアズは80代です。さすがに断るよね。ルツ止めた方がいいよ。


「お母さんの言う通りにします!」

何ですと!ルツはナオミに言われた通りに、体を洗い、香油を塗ってマントを来て出掛けました。


 ボアズの宿泊所に付いていき、眠っているボアズの足元をまくり、横になりました。ボアズのすぐ横にではなく、足元にTの字で寝ます。


 真夜中、ボアズは寒くて身震いし起きます。初夏とはいえ、おじいちゃんですもの、足めくられたら寒いやね。腹巻きも必要です。知らんけど。


 ボアズは足元に寝ている女性に気付いてビックリ‼

「誰ですか?」「ルツでございます!どうか私を保護して下さい!あなたは買い戻す権利をお持ちですから」ルツは答えます。


 保護?ボアズはジェントルマンです。保護してがどういう意味か直ぐに分かります。


「あなたに神の祝福がありますように。あなたは貧富を問わず、若い男を夫にしようとしませんでした。心配は要りません!あなたの言う通りにしましょう。ただ、私より近い近親者で権利を持つ人がいます。今夜はここにいなさい。朝になってその人があなたを買い戻さなければ、この私が買い戻す事を神にかけて誓います!」


 義兄弟結婚レビラートには優先順位があります。第一はエリメレクの最年長の兄弟から順番です。兄弟がいなければ、父方のおじです。ボアズはエリメレクの兄弟ではないので、実質二番目の権利を持つ者でした。


 ボアズはルツに変な噂が立たないように、人目に付かない朝早く家に帰るようにしました。


 ルツに着ていたマントを広げさせ、六杯分の大麦を入れます。ナオミに対するメッセージです。


 聖書の中で「六」は不完全さを、大麦は働きを意味します。つまり「働きは不完全」まだ義兄弟結婚の手続きは完了していないというメッセージです。小豆入り袋の両端を縛って、信長に送ったお市の方のようです。


 ルツはボアズがしてくれた事をナオミに全て話しました。ナオミはボアズを信頼して言います。


「この事がどうなるのか分かるまでここにいなさい。ボアズは今日中に話がまとまるように、手を尽くしてくれるから」と。


 ナオミはポジティブです。ルツの従順さにも驚きます。ボアズがダメでも、再婚相手はおじいちゃんですもの。私には無理。旦那が死んだら、その兄弟と結婚するなんて、無理。まあ子供いるから関係ないけど。藁、藁 違う(笑) 老眼


 ボアズは朝になると、直ぐに行動します。買い戻す権利を持つ人に会いに行くのです。エッチしたい衝動を抑えて、神の取り決めに従うボアズも立派ですね。あっ、おじいちゃんか。すぐには無理ですね。全国のおじいちゃんに謝れ。ごめんなさい。

 

 ルツは覚悟を決めて、イスラエルの民として生きる事にしました。それは、イスラエルの神に従う事でもあります。ナオミの神は、私の神と宣言した通りです。ルツがんばれー!


 




 

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