寒さを凌ぐためには……

「あぁーさみぃー……」


「お兄様、しっかりしてくださいよーだらしがないですよ?」


「わかってるけどさぁーさみぃんだもーん」


「はぁー……だいたい私がマフラーと手袋用意しておいたのに、どうして着てこないんですか?」


「いや、アレ邪魔くさくてしゃーないし」


「まったくー……それで風邪引かれてはこっちが困るんですからねっ」


「そうだっ! なあなあ、ちょっと」


「? どうしました、お兄様?」


「前から一度やってみたかったんだよねぇー! その長い髪をマフラー代わりに!」


「えっ!? 私の、ですか?」


「ほらっ、愛しい兄が寒さで死んじゃうよぉー?」


「はいはい。でもあんまり乱暴に扱わないでくださいね、私の大切な髪の毛なんですから」


「まあ、命よりも大事ってよく言うしな。オッケ、わかったよ。じゃあさっそくだけど、明日香は俺の後ろに立って密着して。んで、そのまま髪を俺の首に巻くと――」


「んー……当たり前だけど首元全然暖かくないな」


「で、でしょうね……」


「しかも何か毛の感触で、すっげぇー痒い……」


「やめましょっか」


「ああ、やっぱ2人マフラーの方が暖かいし、距離も近づけるし、手も繋げるしで、そっちの方がよさそうだな」


「えっ、2人マフラーって……だ、だれっ、誰とッ!?」


「そりゃお前、明日香の以外ないだろ。だいたいお前のマフラーこういうこと予想して、わざと超長いのにしてんだろ?」


「うぇッ!? そ、そにゃんことニャイですよっ!?」


「あしゅか、噛み噛み……ほらっ、いいからさ!」


「あっ、ちょっ、お兄様ぁ……恥ずかしい……」


「でも暖かいだろ?」


「は、はい……そうですね」


「さあ、さっさと帰ろうぜ! 腹も減ったし、明日香のあったかい飯が早く食いたい」


「もう、お兄様ったら――」

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