第9話 どうしても書きたい話

 書き手のみなさん、どうでしょう。どうしても書きたい話ありませんか。書きたくて書きたくて、だけど書けない話。わたしはあります。


 なぜ書けないのか。それはやはり長編だからでしょう。これまで最長でも50,000字強のものしか書いたことがないわたしにとっては高いハードルです。


 なぜ書きたいのか。なぜなんでしょう。自分でもよくわかりません。ただ、長い間、抱え込んできた構想であることは事実です。それだけ愛着があるのかもしれません。


 あんまりに長いこと抱え込んできたものですから、ほとんど原形を留めていません。わたしの小説観やプロット構築の技術がアップデートされる度、更新を重ねてきました。テセウスの船じゃありませんが、何をもってこの話がこの話たりえているのか最早自分にもわからなくなってます。


 思うに、この話は自分にとっての長編小説そのものなのでしょう。長編をいかに書くか。短編を発表する傍ら、その試行錯誤を繰り返してきたのがわたしの創作歴です。その試行錯誤がこの話には刻まれているのです。それは思い入れも湧くというものでしょう。


 尤も、書き手があんまり長いこと同じ構想を抱え込むべきではないという声も耳にします。それだけ思い入れが強くなりますしそうなると、ハードルも高くなる。結果として、なかなか書き出しづらくなる。書き終えたとしても、その出来や公募の結果などで落ち込みやすくなるとのことです。


 わからなくもない話です。わたしも可能なら一刻も早く、この話を形にしたいのですが、いかんせん技術がまだ足りません。どうにも細部が詰め切れないのです。そんなものは書きながら考えればいい? ええ、そう思ってずいぶん前に書きはじめてはいるのですが、わたしの場合、細部まで定まっていないとどうしても立ち往生してしまうようなのです。


 そんなわけで先はまだまだ長くなりそうです。これからまた大幅に構想が書き換えられる可能性もあります。しかし、いつか必ず発表したいとは思っています。

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