第15話 ファイヤーファイター
ヒッツィとは、金の柄に納められている、炎のエネルギー単位だ。これもそれとなく、奈保が教えてくれた。
メシヤは炎の消えた鳳雛剣を“鞘”に納めた。間髪入れずに臥龍剣を右手で抜き、大きく息を吐くと、銀の柄に壮麗な龍の化身があらわれた。メシヤは両手で臥龍剣を握ると、その水の塊をまだくすぶっているバンガローに向けて一斉放射した。
火の粉が飛んで軽い火傷ていどですんだ子供たちではあったが、水龍のシャワーは文字通り恵みの雨であった。
水流も火炎もエネルギーとして吸収し、今回は銀の柄から水龍を出現させて、火事現場を鎮火させることに成功した。
メシヤは一躍ヒーローになった。小学生の子供達が群がって歓声をあげた。メシヤは精神年齢が低いので、もともと子供には好かれる。
「メシヤ、すごいじゃない!」
「いまのどうやったノ?」
「メシヤさま、お怪我はありませんでしたか?」
「メシヤ! でかした!」
マリア、エリ、レマ、イエスたちが寄ってたかってメシヤを褒め称える。
「そう、それでいいのですよ。メシヤくん」
色白の太った小男が隣の棟のバンガローから眺めていた。奈保である。いったい何歳なのか想像がつかないが、いまのところメシヤの味方のようである。
反対方向の木の枝から一部始終を見ていた男がもうひとり。
「ふむ、こいつはあの神剣の初歩的な使い方ではあるが」
ダニエルである。タバコに火をつけ一服している。
「いちおう、ボウスハイトさまにも報告しておくか」
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