1339.レジスタンス組織の、役割。

 シュキさんのスキルの確認が終わったところで、俺たちは今後の話をした。


 ムーンリバー伯爵たちと話した内容を共有したのである。


 今後、悪魔の手からこの国を取り戻す戦いを仕掛けるという話である。


 そしてレジスタンス組織にも合流してほしいとお願いした。


 レジスタンス組織のリーダーであるハートリエルさんは、二つ返事で了承してくれた。


 そこで、改めてレジスタンス組織の陣容を確認させてもらった。


 レジスタンス組織の構成員は、百二十三人とのことだ。


 公都を含めた各市町で虐げられた人々を救う活動をしているので、細かい班に分散し各市町に潜入しているとのことだ。


 俺としてありがたいのは、全市町に活動拠点を持ち人を配置していることだ。


 情報取得という点からしても心強い。


 現状としては、この迷宮都市以外の市町は、ほぼ全て公都の言いなりという状況なのだそうだ。


 まぁ国の中枢の言いなりというのは、当たり前と言えば当たり前なんだけど、この場合は少し意味が違う。


 中央政府の非道な方針に、ものを言えるかどうかという事を意味している。

 もっとも、それを期待するのは、可哀想と言えば可哀想なのだが。

 こういう世界だから、権力者に逆らえば命に関わるからね。


 ただ俺としては、虐げられた人々を守るためにものを言う気概がある領主や貴族がいることを期待したいという気持ちはある。


 この国にも、そういう気概のある者たちはいたようだが、この七年の間に全て排除されてしまったらしい。


 そんな中で排除された者たちの一部は、レジスタンスに加わっているのだそうだ。


 そんなレジスタンスメンバーたちも、喜んで参加してくれるだろうとのことだ。


 そして正式な王女であるトワイライトさんが先頭に立って戦いを始めれば、レジスタンスのメンバー以外にも、その活動に加わろうとしてくれる人は、もっと現れるだろうとのことである。


 そこで俺は、作戦を説明する。


 現在は公都の出方を見ている状態だが、ほぼ間違いなくこの迷宮都市へ軍を向けてくるだろうということ。


 その際に王女であるトワイライトさんと勇者であるタマルさんが先頭に立って、国を奪還する戦いを始めること。


 送られた軍隊を倒した後は、公都に向かって進軍すること。


 このタイミングで各市町でも、決起を促すこと。

 この時、レジスタンスを中心に決起して、公都の息のかかった貴族たちを拘束し、援軍を出せないようにするつもりである。

 また、衛兵でこちらに賛同する者を組織し、応援部隊として迎え入れて、戦力を充実させる。


 こんな感じの作戦を説明した。


 そして、改めてレジスタンスに期待する役割を説明した。


 レジスタンスのメンバーを、これから動き出す奪還軍に加えるのではなく、各市町で援軍を阻止する活動をしてほしいと伝えた。


「なるほど、それは素晴らしい作戦です。

 ですが……我々が各市町に配置している人員は多くありません。

 十名前後ですので、この役割を担うのは少々荷が重いかもしれません。

 選りすぐりの人材で、皆レベル30程度はありますが……」


 シュキさんは、微妙な表情で意見を述べてくれた。


「ええ、もちろんわかっています。

 レジスタンスの皆さんは、その動きの足がかりを作ってくれるだけでいいんです」


「と言いますと?」


「各市町の解放と決起は、実際には、我々というか……生きていた王女トワイライト様と、『月光の勇者』の再来タマルさんが行うという筋書きです」


「そうなんですね。

 ……でもそのお二人は奪還軍の旗頭として、先頭に立って進軍するのではないのでしょうか?」


「その通りです。

 ですが、我々には転移の魔法道具がありますから、神出鬼没に移動できます」


 俺はそう言って、ニヤリと笑った。


 俺の意図がわかったらしく、シュキさんもニヤリと笑う。


「なるほど、そういうことですね。

 奪還軍として進軍しながらも、各市町で活躍できるというわけですね。

 各市町に王女と勇者が現れたら、みんな奮起するでしょうね。

 もしかしたら、言いなりになっていた貴族の中からも、味方につきたいと言ってくる者も出るかもしれませんね」


「そうです。

 王女と勇者が現れたときに、恭順するか敵対するかで我々の対応も変わります。

 敵対する動きに出たときには、その時点でその街の衛兵隊を無力化します」


「なるほど、普通なら不可能でしょうが、グリムさん達の戦力ならば、ほんの数人でも成し遂げるでしょうね。

 私も『絆』メンバーに入れていただいて、『共有スキル』を手に入れて、強く実感します」


 そう彼女も『絆』メンバーになって、通過儀礼のように『共有スキル』の多さとスキルレベルが10であること、そして念話が使える事に驚愕し感動していたのだ。


 もっとも武人気質な彼女らしく、驚き固まってはいたが、大騒ぎするような事はなかったんだけどね。


 心静かにというか、冷静を装って密かに心の内で打ち震えているような、そんな感じだった。


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