1305.子供たちの練習台になった、哀れな襲撃者たち。
正門付近では、『キジムナー』のカジュルちゃんが、奮闘している。
『種族固有スキル』の『釣り名人』を発動しているみたいだ。
釣竿を出して、襲ってくる男たちを釣り針で引っ掛けて放り投げている。
まるで狂乱男の一本釣りだ。
釣り上げられた男たちは、地面に叩きつけられダメージを受けている。
下手したら首の骨を折って死んじゃうじゃないかと心配になったが、そこら辺はうまく調整しているようだ。
まぁこいつらが死んでも、所詮は自業自得だけどね。
それにしても、『キジムナー』のカジュルちゃんはすごい。
体のサイズがニアと同じ40センチくらいなのに、狂乱した男たちを釣竿で軽く釣り上げている。
『釣り名人』という『種族固有スキル』が攻撃にも使えるとは思わなかったが、かなりいい感じだ。
やはり『魚使い』のジョージの相棒である陸タコの霊獣『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティとの釣り大会は見てみたいね。
オクティは八本の腕を使って、魚の八本釣りをやっちゃうので、ある意味釣りチートでもあるからね。
まぁオクティがいつも使っている釣竿は、自動で追尾して魚を捕まえる魔法の釣竿だから、反則かもしれないけどね。
ただ、カジュルちゃんが使っている釣竿も、おそらく何らかのチートな釣竿なんだと思う。
糸が自在に伸びているし、針も自由に動かせるようだ。
自分の体の一部のように使える釣竿なんじゃないだろうか。
そう考えれば、オクティと釣り対決をしても問題ないだろう。
仲間たちみんなで釣り大会をしても楽しそうだ。
いかんいかん、戦いの最中にそんなことを考えている場合ではなかった。
反省反省。
迷宮の付喪神となったイチョウちゃんも、軽快な動きで躍動している。
ただ『デミトレント』たちにしろイチョウちゃんにしろ、レベルはまだ20ちょっとなので、余裕があるわけではない。
私兵やゴロツキたちも、レベル15から25といったところだからね。
ちなみに付喪神となったイチョウちゃんが獲得した『種族固有スキル』には、直接攻撃に使えるようなものはない。
だが、『共有スキル』が使えるから、多彩な攻撃が可能だ。
ただ、イチョウちゃんは武器での直接攻撃を選んだ。
まぁ対人制圧戦の訓練という意味では、その方が力加減の調整や手加減の経験になるからいい選択ではある。
それはいいのだが、今回イチョウが選んだ武器は、かなり変わっている。
それは、俺が没収した金棒だ。
そう、“鬼に金棒”的なビジュアルの武器だ。
解呪してあるので、安全に使える
イチョウちゃんは四歳児のアバターボディーなので、金棒は更に巨大に見える。
まぁそもそもが、不釣り合いなのである。
でもイチョウちゃんは、物理での打撃攻撃に憧れがあるようで、嬉々とした顔をしている。
レベル20を超えたステータスと元々のアバターボディーの能力により、問題なく振り回している。
ただ冷静に考えると、金棒はトゲトゲもあるし、ちょっと間違うと殺しちゃう可能性もあるが、うまい具合に死なない程度に打ち付けている。
足を中心に攻撃して、動けないようにしているのだ。
少しして、ドラッグン子爵の一団は完全に制圧された。
数が減った途中からは、子供たちも参加して制圧した。
もちろん、俺たちが完全監視で万が一がないように配慮した中で行った。
子供たちは魔物を倒すことでレベルアップをしているが、人と争う事は練習以外ではなかったので、貴重な経験となったはずだ。
少し思ってしまったが、現時点でも俺のクランはこの迷宮都市の最強戦力かもしれない。
この子供たちが大きくなったら、どうなってしまうのだろう……。
まぁいいんだけどね。
自分の身を守れるように強くしてあげたんだし。
冒険者になりたいと希望している子が多いから、すごいクランになってしまいそうだ。
というか、現時点でも人数的にも質的にも凄いクランではあるけどね。
ちなみに、今回戦いに参加したメンバーに大きな怪我をした者はいない。
制圧した相手も、もちろん死者はいない。
当然重傷者はいるわけだが、瀕死になった者もいないので、対人制圧戦の訓練としては良くできたと言っていいだろう。
奴らが騎馬として連れてきていた馬三十頭は、戦っている間に俺が仲間にしてしまった。
テイムされているわけでもなく、主人に忠誠を誓っている感じでもなかったので、仲間になるかと話しかけてみたら、みんな仲間になったのだ。
もちろん、『絆』メンバーになる前は念話での会話はできないわけだが、俺の問いかけに頷いてくれたのだ。
仲間になった後、念話で少しだけ話をしたが、今の飼い主に未練は全くないそうだ。
やはり酷い貴族というのは、生き物に対しても酷い扱いをしている場合が多いようだ。
世話係はいい人だったりするところもあったようだが、特に未練はないということだった。
しかし馬が三十頭も手に入るとは、予想外だった。
当然クランの厩舎では入りきらないので、拡張するか、他の場所に移すしかない。
今後のことを考えれば、馬の数を増やして、何かあった時にクランメンバーが使えるようにしてもいいかもしれないけどね。
なんとなく思ったが……将来的に『ツリーハウスクラン』に騎馬軍団とかができたら……それはそれで怖いなぁ。
まぁ後からゆっくり考えればいいだろう。
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