1300.クランの支所が、機能充実する。
『ツリーハウスクラン』に集まってくれた南区在住の薬師の皆さんへの説明を終え、クラン加入の意思確認をして解散となった。
本当は、美味しい食事をご馳走したいところだったが、ここに薬師が集まっていることがバレるとまずいので、早々に解散してもらった。
後日、ゆっくり食事の場を設ければいいだろう。
それから、おばあさん薬師のヒリングさんに、『ツリーハウスクラン』の薬師部門の部門長をお願いできないかとお願いした。
彼女の人望の厚さと長年の経験をかってのことだ。
だが彼女には、そんなの性に合わないと断られた。
断られる予想はしていたので、少し粘って交渉した。
事務的な作業や細かな事はスタッフをつけるし、薬師を取りまとめるご意見番的な感じでいいからとお願いしたのだ。
年長者でもあるし、彼女に教えを受けて独立した薬師も結構いるらしいから、影響が大きいのは確実だ。
豊富な経験と知識を活かして、若い薬師の相談役にもなってほしいし、薬草の知識を俺も含めたクランの子供たちにも教えてほしいとお願いした。
そんな感じでしばらく話していると、話はだんだんと雑談に広がっていった。
そして、ヒリングさんのやりたいと思っていることを聞き出すことができた。
それは、今ではほとんど流通していない安価な専門薬を作りたいということだった。
昔は、ちょっとした傷につける傷薬などを作っていたが、今は効率重視で、外傷については総合的に治してしまう『身体力回復薬』しか作らせてもらえないのだそうだ。
薬師ギルドの方針というわけだ。
まぁわからなくはない。
『身体力回復薬』があれば、大は小を兼ねるで大きな問題はないだろうからね。
でも『身体力回復薬』は高価だ。
下級の低品質でも、五千ゴルくらいはする。
安くても三千ゴルはするだろう。
そうなると一般庶民には、気軽に使うということはできない。
ちょっとした傷などでは消費しにくい金額である。
そんな時に、安価で買える傷薬があれば、喜ばれるよね。
現に昔は、普通に売っていたようだし。
そういう特化した薬を、再び流通させたらいいんじゃないかと思う。
俺は、そんな薬の再流通にも取り組もうと提案した。
俺の賛同に気を良くしたヒリングさんは、笑みをこぼし満足そうに頷いていた。
新しい薬というか、以前売られていた薬なわけだが、それを復活させ、新しい薬師の活動体制を築けるのは良いことだと思う。
俺としては、むしろいいアイディアをもらった感じで、今後が非常に楽しみになった。
そんな話ができたこともあり、また、じっくり時間をとって話をしたからか、ヒリングさんの心もほぐれたようだ。
最後には、「しょうがないね。面倒だけど、引き受けてあげるわよ」と了承してくれた。
これで、薬師たちをまとめやすくなるだろう。
あとは、しっかりフォローする体制を作ってあげないとね。
とりあえず『ツリーハウスクラン』の中に、薬師部門の拠点となる施設をしっかり作ろう。
それから北区と中区にある『ツリーハウスクラン』の支所にも、予定通り薬師部門の納品受付所などの施設も作らないとね。
これで、本格的に支所も機能を発揮することになる。
支所の名前も正式に決めた。
と言っても、ありきたりの名前だけどね。
北区にある元宿屋だった場所は、『ツリーハウスクラン北区支所』となった。
中区にあるお屋敷は、『ツリーハウスクラン中区支所』だ。
それから、『ツリーハウスクラン』と同じ南区にあるが、大通りから見て反対側の『東ブロック』にある元ドクロベルクランのクラン本拠地だった大きな屋敷にも、名前をつけた。
ここは、『ニアーズハイ』の拠点として使わせてあげるし、冒険者ギルドで講習などをする場合にも使わせてあげる予定だが、一応『ツリーハウスクラン南区支所』という名前にした。
ついでに、南区北区中区にある元私立の孤児院だった場所で、子供たちを保護するために俺が買い取った場所の名前も、正式につけた。
『ツリーハウスクラン南区養育支所』と、『ツリーハウスクラン北区養育支所』と『ツリーハウスクラン中区養育支所』だ。
全て何の捻りもないが、別にいいだろう。
ちなみに、この三つの養育支所のスタッフは、順調に集まってきている。
また、スタッフ募集の話を聞いた冒険者の中で、すぐには引退しない人も、暇なときに手伝うと申し出てくれていて、人手不足は何とかなりそうである。
そして、『ニアーズハイ』や『ゲッコウ自警団』の皆さんも、巡回警備をしてくれるし、子供たちに対する様々な技能の指導もしてくれることになっている。
ありがたいことである。
『ツリーハウスクラン』の本所以外に関連施設が六箇所できたことになるが、安全対策も早急に取らないといけない。
『ツリーハウスクラン』の関連施設ということで、狙われる可能性があるからね。
とりあえずは、迷宮都市の中を自由に巡回させているスライムたちに指示をして、常に何体かはこれら施設に常駐してもらうことにした。
何かあれば念話ですぐに報告が入るから、駆けつけることができる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます