1276.テスト目的は、迷宮のリフォームや新築?

 『魔力炉』が稼働し、同時並行で俺も魔力を流した甲斐があって、思ったよりも早く迷宮全体にエネルギーが流れるようになったようだ。

 設備ルームのパネル類も、かなりの数が灯って動き出している。


「現在……全システムの30%程度が稼働しました。

 修復システムも、基本機能は稼働できる状態になりました。

 このままの状態を続ければ、時間がかかりますが60%程度までは回復可能と考えます。

 そこまで回復できれば、『再起動復旧モード』を実行することが可能になります」


 『迷宮管理システム』が、報告をあげてくれた。

 前に復活させた『ゴーレマー迷宮』の時と同じだ。


「それはよかった。

 ただ、『ゴーレマー迷宮』の時は、すぐに稼働できるのが30%程度で、ここから60%まで持っていくには、時間を要するということだった。

 通常の自動修復機能を使いながら可動域を広げるから、数ヶ月を要する可能性があるんじゃないか?」


「はい、その通りです」


「これから数ヶ月かけて稼働率を上げて、その後に『再起動復旧モード』に入る。

 『再起動復旧モード』が終わるのには、おそらく一年ぐらいかかるということなんだね?」


「お見それしました。ご推察の通りです」


「『ゴーレマー迷宮』の時と同じだろうと思って、その記憶をもとに考えただけだよ。

 ……気長にやるしかないね。

 でも生きててくれて、ほんとによかったよ」


「マ、マスター……あ、ありがとうございます。うう……」


 『迷宮管理システム』が号泣している。


 本当に感情表現が凄いというか、むしろ感情の起伏が激しすぎるんじゃないだろうか……。

 まぁいいけどさ。


 そして、俺はまだダンジョンマスターに就任していないのがだが、マスター呼びだし。


 そんな俺の内心が伝わったのかどうかわからないが、『迷宮管理システム』が、泣くのをやめてキリリとした顔になった。


「この稼働率になれば、マスター登録ができますので、登録をお願いします」


「わかった」


 俺は『迷宮管理システム』の指示に従い、ダンジョンマスターとして登録した。


 そして、いつものように『迷宮管理システム』に名前をつけてあげた。

 もうここまで続けてきたら、同じ感じでつけるしかないので……ダリセブンという名前にした。

 ちなみに……今回もネーミングに関するクレームは、受け付けていないのであります……。


 それはさておき、ダリセブンは、名前を喜んでくれているようなので良かった。


 ダリセブンに確認したが、『再起動復旧モード』が可能なくらい稼働率が上がるまでの間は、この迷宮は完全に無防備な状態になるとのことだ。

 これも『ゴーレマー迷宮』の時と同じである。


 『再起動復旧モード』に入れる稼働率60%くらいになれば、最下層のダンジョンマスタールームに近いエリアについては、迷宮封鎖機能が回復するだろうという見立ても同じだった。


 だが、それまでは家の扉を完全解放したような状態になってしまうのである。


 それに……この最下層に来るために、各階層で封鎖状態で閉じられていた扉を俺が全てこじ開けてしまったので、尚更危険な状態なのである。


 そこで、俺は『アラクネーロード』のケニーに念話をして、大森林から防衛戦力として何体か『浄魔』たちを派遣してもらうことにした。


 今の大森林の仲間たちなら、誰が来てもかなり強力な戦力だが、おそらくある程度の精鋭を派遣してくれることだろう。



 それからいつものように、この迷宮についても少し尋ねた。


 『休眠モード』に入ったのは、今までで一番古くて三千二百年ほど前らしい。

 第二号迷宮の『イビラー迷宮』が約千年前で、その他の迷宮は皆約二千年前に『休眠モード』に入っていた。


 それを考えると、この第七号迷宮『ビルダー迷宮』はダントツに長い期間休眠しているので、システムが故障しても当然と言えるかもしれない。


 その地を流れる魔素を吸い上げるシステムが故障すると、エネルギー供給が絶たれてしまい、貯蔵エネルギーが限界を超えると迷宮が死んだ状態になる。

 休眠中と言えども、エネルギーが多少は必要という事なのだ。


 どうも今までのテスト用迷宮を見る限り、魔素を吸い上げるシステムが経年劣化で使えなくなるという共通の問題点があるようだ。

 もともとの設計上というか、スペック的に問題があったのかもしれない。


 もっとも、何千年も不具合なく稼働し続けるという方が、無理な要求だろう。


 ただ休眠状態にあるというのが、不具合に影響している可能性は高い。


 通常稼働している状態ならば、迷宮には自動修復機能があり不具合を修復できるのだ。


 だが休眠状態の場合は、それも機能できないのだろう。



 それから、この迷宮は、迷宮構造の改築や新規の構築、簡単な迷宮の自動構築などの研究とテスト用の迷宮だったとのことだ。


 人造迷宮を作る革新的な技術を多く含んだ研究であるために、情報を秘匿する目的で早い段階で迷宮は閉鎖されたようだ。


 詳しい技術内容はわからないが、研究目的を考えれば、もしかしたら今までのテスト用迷宮の中で一番高機能なのかもしれない。


 既存の迷宮の内容を大きく変更したり、また簡単な迷宮といえども、新たに自動構築できるような技術があるなら、かなり凄いことだと思う。



 それからいつものように、この迷宮の宝物庫に『勇者武具シリーズ』が置いてないかも尋ねた。


 この迷宮の宝物庫は、現時点では開かないそうだ。

 そして残念ながら、『勇者武具シリーズ』と思われる武具は無いらしい。


 まぁ『勇者武具シリーズ』がないのは当然かもしれない。

 この迷宮が『休眠モード』に入ったのは、年代的に『勇者武具シリーズ』を『マシマグナ第四帝国』が手に入れる前だろうからね。


 『武者武具シリーズ』を『マシマグナ第四帝国』が手に入れたのは、九人の勇者を召喚する直前だと思うから、約三千年前だろう。

 この迷宮が休眠したのは、三千二百年前だからね。


 今は開けることができない宝物庫には、いくつかの財宝が置いてあるようだが、それは後の楽しみに取っておこう。


 それから今までは宝物庫が開かなくても、何かしらお土産的なアイテムをもらえたのだが、今回はそれもないようだ。


 期待をしていたわけではないので、あまり残念という感じではないが、ちょっとだけ寂しい感じもする……。


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